Op.ローズダスト 下 (文春文庫 ふ 27-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年2月10日発売)
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5

福井晴敏氏は正しいと思う。
福井氏に添って生きていきたい、という思いばかりが強くなる。

「国益という名の重石を抱え、救援の手をこまねく政府の無策
――組織の論理がもたらす感性の硬直が、臨界副都心に取り残された一万の人間を殺す。
助けようと思えば助けられない道理はないのに、
無名の他所を人間と捉えられない想像力の欠如、
なにごとも合理で量る感性の摩耗が人を殺す。」

と、世の中を冷静に見極めたうえで、

「個々人が指の先ほどの美徳を発揮すれば、
がんじがらめの世界が救われる余地はいくらでもある。」

というシーンへと発展させる。
この辺りの美しさが、たまらない。

それから主要メンバーの幕の引き方、
ラストシーンへの展開の見事さ、
朋希と一功の戦い、戦い後の状態、
そのどれもが完璧すぎて。

さすがにこれだけ何冊も出してくれると、
主人公とその仲間(味方?)は死なないのだろう、
という予想はたってくる 笑

でもそれに関して不自然だとか、そんなことはもう思わない。
非現実的なことといったらどうせ、お台場が戦場になることからして、
「作り物」以上の何ものでもないから。

登場人物も、誰もかれも好き。最高。
人間くさい描写が特にないのに、
(性的な言葉はいっさい出てこないし、他愛もない描写・会話などもゼロ)
ものすごく人間味に溢れているキャラクターが、
大勢出てくる。
どの世代のどのタイプの人間も、すべて好き。

そして最後、参考文献のあまりの少なさに驚愕した。
自衛隊や兵器、戦場、国際情勢、経済、右翼、左翼・・・
何から何まで、専門的な知識に溢れているシーンを、
圧倒的なボリュームと緻密な描写で構成しているにも関わらず、
参考文献がたったの3冊って!!

いったいどれだけの知識が、福井氏の頭の中には詰まっているのだろう。
自叙伝的なものを読んだときには、
ぜんぜんそんなタイプに思えなかったのに 笑
・・・とにかくまあ、すごすぎる人だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: バイブル的小説
感想投稿日 : 2012年9月20日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年9月2日

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