乙一さんの「箱庭図書館」から図書館繋がりで
こちらの「図書館の神様」。
優しい題名と思って読んでみたら なんとも優しい本だった。
幼い頃から高校までバレーボールに全てを捧げてきた清は、バレー部の後輩の自殺をきっかけに バレーボールから離れてしまう。大学生になり またバレーボールをしたくなった清は 恋人の勧めで「コーチ」という立場からバレーボールに携わることを提案され、高校の講師となる。しかし、清が受け持つことになったのは、部員がたった1人しかいない文芸部の顧問だった。
後輩の自殺のきっかけを作ったのは自分の指導のせいではないかと悩んだり、恋人は婚約者と結婚して不倫関係になったりと、清の人生はなかなかに暗くハードなものに思うんだけど なぜかそれを重く感じることは出来なかった。清の性格のせい?周りの人が優しい人ばかりのせい?どんな悲しいことも 生きていけば日々の生活の中でいつかは薄れていくよってメッセージだったのかな?
高校の講師にも部活の顧問にも退屈さを感じていたり 不毛な恋をしていたりの清の毎日に、唯一の文芸部員の垣内くんの存在はよかったなぁ。垣内くんとのやりとりも、部活最後の日に意味もなくグランドを走り回ったあとに 図書室でソーダを飲むのも。あ、青春ってなんかこんな感じだったよなぁって。
子供の頃は 何か困ったことがあると「神様どうか助けて下さい」と何かと神頼みをしたもんだけど、大人になり大抵のことじゃ神頼みもしなくなったし おみくじとかも信じてないし。
ただ 朝日に照らされて輝いている海や、日が落ちて赤や紫にグラデーションを作る山のシルエットや、自然や景色に心を奪われることが年々増えてきて
『目になれし山にはあれど
秋来れば
神やすまむとかしこみて見る』
という石川啄木の短歌に 生徒たちが「わかるなぁ」と感慨深げに言う場面にはっとした。「秋の山を目の当たりにすればわかる。山には神が住んでいる。単に美しいのではなく、神々しい。」なるほど。わたしも神様をちゃんと感じていたんだ。
神様が図書館にもいるならば、神様、感動で心が震えるような、怖すぎて次のページもめくれなくなるような、笑いすぎて腹が捩れて涙がでるような、そんな本との出会いがありますように。
『文芸部は何一つ同じことをしていない。僕は毎日違う言葉をはぐくんでいる。』
こんなに書いといて星は2
疲れているときにはホッとできるような本でした。
- 感想投稿日 : 2023年2月18日
- 読了日 : 2023年2月18日
- 本棚登録日 : 2023年2月11日
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