ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

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  • 中央公論新社 (2009年11月25日発売)
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1965年、46歳の日本銀行行員はIMFからの依頼要請に基づき、当時アフリカの最貧国であったルワンダの中央銀行総裁に就任する。そして6年弱の任期中に経済を復活させ、その後の経済発展の基礎を作るーそんな一見信じられないような偉業を成し遂げた著者がその悪戦苦闘を自ら語った随筆が本書である。

当時のルワンダは旧宗主国であったベルギーを中心とした外国人が商業の実権を握っており、ルワンダ人は基幹産業であったコーヒー豆の生産への従事が主であった。外国人勢力は法制度の抜け道を利用して自らの利益を最大化し、本国に送金することしか考えておらず、経済活動の果実は一切ルワンダには還元されない。

”日本が敗戦から立ち直り経済成長を遂げたように、ルワンダも必ず経済成長は可能である”という強い信念の元で、通貨制度の改革や、自ら数少ないルワンダ人商人のもとへ足繁く通い、農業の生産性向上と商業活動の発展のための立法などを行い、6年間かけて経済成長を実現させる。後者のような業務は中央銀行総裁の所掌業務ではなく、かつ当時のアフリカ経済といえば鉱山資源の採掘・輸出業が中心であったところ、農業・商業に着目をして地に足の付いた経済成長を実現した点は、鉱山ビジネスの失墜と共に経済成長も破綻してしまった他アフリカ諸国との大きな違いであり、著者の卓越した判断であったと言える。

徹底的にルワンダ人との直接の対話・ヒアリングを重視し、自らの既得権益を守ろうとする外国人勢力と果敢に戦いながら政策を実現した著者のリーダーシップには感嘆させられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済
感想投稿日 : 2021年5月16日
読了日 : 2021年5月16日
本棚登録日 : 2021年5月16日

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