ふたりの文化祭

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年3月30日発売)
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本棚登録 : 190
感想 : 26
5

やっと過去の読書レビューをブクログにあげたら
「こんな(失礼)作家さんも読んでたんやな…?」
と、思うことが多々あった。読書をしだすとつい、巻末に載ってるリストから面白そうな本を探して借りていくので、どういう経緯で出会ったのか分からなくなってくるのよね。

ちゅうことで、そんなふうに過去のレビューからの出会いで借りてみた作家さん。
初読ではないけど数年前に一冊読んだだけなのでほぼ初読。どういう本なのかもわからんまま読み進めて、……うん、まあ、一気読みした。

これは、先日読んだ「どうぞ愛をお叫びください」に近いものがあるな!? 初版が2016年か…。わりと最近やんな。どこ世代が対象なんやろう。

わりとぶつぶつと切れる文章とか改行は最初はちょっと読みにくかったんやけど、途中からはそういうことを忘れるほど内容に没頭した。
書き手の癖って、内容が面白ければすぐに忘れるのよね。

最初は、九條くんはちょっと大人っぽい、バランス感覚のいい子なんやなあと思ったし、あやちゃんは自己完結を無理矢理するような生きづらい子なんかなあと思ってたけど、いやいや。

いやいやいやいや。

この本のキモはそこにあるので言えないけれど、ほんま、クラスの中心的存在の男子と、おたくさん系女子が(あまりいい流れではなく)ふたりで文化祭を取り仕切ることになって、イヤイヤながらもすすめていくうちに二人の距離が縮まり、またクラスの団結力も高まって……

ちゅう、内容と全然ちゃうからね!!! 笑

いい意味で、タイトル詐欺か…? と、思ったけど、よくよく考えたら全然そんなことはない。むしろタイトル通りやった。

わたしはめちゃくちゃ面白かったから、娘に勧めようと思う。けど、「どうぞ愛をお叫びください」を読んだ娘はめちゃくちゃ冷静やったので(笑)、わたしは相変わらず夢見がちに読書するよなと思う。


ところであやちゃんとアリサちゃんの会話はほんまに面白かった。この二人の関係もドライなんやけど、そこは結城さんが確信をついて表現してくれてたね。

「自分に欠けているものを他人で埋めようとしない」。これは、すごいことやで。
わりと誰でも最初はこうやのに、成長するにしたがって躍起になって他人で埋めようとしていくよね。それって何でなんやろ。団体生活を無難に送るにあたって「周囲と同化しているほうがいい」もしくは「同調しなければならない」けれどなかなかそれが叶わない(そもそも何でも同調できるのが不可能やねんから、叶わなくて当たり前やねんけど)から、何とかしようとした結果、何かを他人で埋めようとするのかもしれへんな。

それこそ、自分の評価を他人に押し付けるってそういうことよね。
他人の目ばかり過剰に気にするのもしかり、また、同調できない相手のほうが立場が弱かったら少数派を排除しようとしたりすることもしかり。

結局、大事なのは個人であって、足りないものがあってもいいのよ。
自分にとって自分のために足りないと感じて、なおかつそれで自分が満足できないのなら自分のために努力すればいいし、コミュニティに属するためだけに何かが足りないのなら(他人に迷惑をかけないことはある程度前提にして)足りないでいいよね。

極論を言えば、何かが足りなくて迷惑をかけるのならそのコミュニティに属さなければいいんやし……。

(それでも属したいと自分が思うのなら何等かの努力をするやろうし)

「どうぞ愛をお叫びください」も、この本も、当たり前のことを当たり前に書いてるんやけど、わたしらの世代ではそれは当たり前でなく「すごいな!!」て感じることが多い。

せやからこそ、若い子が読んで「ふーん……」と、冷静に受け止められるのなら、いいなあと思う。

いやそれにしても、巻末に貼ってある帯文句を読んでも「内容と違うんちゃうか?」と、思う……(笑)。


そして、小説を読めることも才能なんやって。それは「ええ!?」て思うけど、実際わたしの周囲には「文章を読めないこともないけど、わざわざ時間を作って読書はしない」という人が多かったかもしれない……。

本は読めるけど読書は敢えてしないっていうのか……。好んで読書をする人とはぜんっぜん親しくならないままここまできた。

ほんまに、リアルで繋がってる人で読書をする人はこれまでほとんど出会ってない。
学生時代の友人も、社会人になってからであった人も、いないわー。

メディアにとりあげられる本とか、何かの機会があれば読んだりもするけど、常に読む、暇を作ってでも読む、ちゅう人はいなかった。

せやから本の貸し借りとか……。おすすめタイトルを言い合うとか、めちゃくちゃ憧れのままここまで一人読書を続けてきてるわ。笑

おたくさんラインから繋がる方はほとんど読書しはる。やっぱりおたくさんっていろんなことが当たり前にできるよね~。

(もしかするとその分運動方面はあんまりできひんのかもしれへんけど、そこは大人になるとまったくどうでもいいので話題にもあがらんような気がする)

わたしも学生時代にアリサちゃんみたいな友だちが欲しかったなあ。
毎日学校でもえの話をしたり、読んだ本について話したりできたら、すごい楽しいんじゃないかな……。

なんでわたしはそういう学生生活を送っていないのだ。
(答え:バレーばっかりやっていたから)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月30日
読了日 : 2020年8月30日
本棚登録日 : 2020年8月30日

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