本棚から何気に選んでの14年ぶりの再読であるが、ストーリーには少しも古さを感じさせない。
手術で父を亡くした主人公氷室夕紀は、その手術に医療ミスを疑い、担当した医師の元で研修医を務め、その疑念を晴らそうとする。
その目的を果たすべき手術日に、病院を爆破するという脅迫事件が襲う。
迫り来る病院の危機は防げるのか。
彼女の疑念は解消し、目的を果たせるのか。
主人公の秘めた目的にテロ事件を絡ませたサスペンスフルな展開に、ベストセラー作家の巧みさを感じる。
題名に使用される「使命」は、夕紀に対する父の言葉として、たびたび語られる。
「人間というのは、その人にしか果たせない使命というものを持っているものなのだ」
事件を担当する刑事も、かつての先輩刑事=夕紀の父の言葉を反芻する。
「人間は生まれながらにして使命を与えられている」
さらに、犯人の動機としてもこの言葉が用いられる。
「救命士も医師も最善を尽くそうとした。自分の使命を果たそうとした。彼らにそれをさせなかったのは、じつはたった一人の老人が自分の使命を忘れたからなのだ」
エンターテイメントの形式で、人間の使命というものを、その意味を問いかける医療ミステリー。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2021年11月4日
- 読了日 : 2021年11月3日
- 本棚登録日 : 2012年8月26日
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