蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2008年5月20日発売)
3.72
  • (467)
  • (850)
  • (864)
  • (99)
  • (18)
本棚登録 : 6996
感想 : 565
4

不思議な能力を持った人たちを描いた常野シリーズ二作目。
三冊のうちの第一作『光の帝国』を読んだのが今年の2月。
忘れちゃったかなぁ…と、前作をサクッと読み直しました。

20世紀初頭の東北の村で起こる ちょっと不思議なできごとの数々。
人々の記憶を「しまう」能力を持つ春田家が槇村家を訪ねます。
槇村家は、代々 村落が平和に暮らせるよう尽力してきた旧家です。
善意の人々の中で語られる 穏やかな物語として始められるのですが…。 
                                                                                              
印象に残った箇所が二つありました。
ひとつは、洋画を学ぶ青年の絵と仏師による日本画、二枚のコントラスト。
槇村家の令嬢、聡子が意見を求められて、こう 分析します。
西洋の絵が「今の瞬間を写真のように正確に描く」のに対して、
日本の絵は「時間の流れを描いているよう」に思われます、と。
                                                                                             
もうひとつは、命を終える ということについて。
春田家の少年が、この世ではない世界からの声を届けます。
務めを果たし、満足の頂で世を去ることができて幸せだ、と。
命は、いつか必ず終わりを迎えます。
毎日の心の在りようこそが、満足の頂への道なのかもしれないな。
ふんわり、そんな風に感じた箇所でした。
                                                                                                                         

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恩田陸
感想投稿日 : 2021年8月30日
読了日 : 2021年8月30日
本棚登録日 : 2021年8月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする