新潮 2017年 04月号

  • 新潮社 (2017年3月7日発売)
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本棚登録 : 181
感想 : 28
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又吉さんの「劇場」を読んだ。序盤が全然面白くなくて、学生時代のくだりは説明くさいし、いちいちめんどくさい突っかかりがあって、これ最後まで読み切れるかな…と思ったけど、最終的に面白かったので不思議。「火花」とは違う視点の話なんだけど同じ空気感。作者の持ち味なんだと思った。
儲からないアマチュア劇団を主宰している主人公と、優しさの塊みたいな彼女の話。ストーリーに新鮮さというか意外性はなくて、ラストもそうするしかないだろうなという展開だった(別れて彼女が地元に帰る)けど、これこそ作中で触れられていた「のんきな奴等がふざけ合いながら何気ない日常を過ごし、でもその心には深刻な苦悩を抱え、それが表出されるのは必ず決まったように後半で、最後は無理やり泣かそうとするようなもの」だった。作中ではこれを、頭ひとつ抜きん出た別の劇団がやって主人公は嫉妬しながらもうっかり感動してしまうんだけど、この小説はそれをやろうとしているのかなと、そういうことを考えた。
作中で何度も出て来る演劇論は、作者の持っている芸術論なんだろう。創作とは何かと繰り返し問うている姿勢が作品の中にあった。面白かったと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月22日
読了日 : 2017年4月22日
本棚登録日 : 2017年4月22日

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