わたしが正義について語るなら (未来のおとなへ語る)

  • ポプラ社 (2009年12月1日発売)
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感想 : 42
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昨日は科学関係の本で分かりやすいものがないかと児童書コーナーを見ていたのですが、「わたしが正義について語るなら」という気になるタイトルがありましたので思わず見てしまいました。



アンパンマンで有名なやなせたかしさんが書かれた本で、正義についてよりやなせ氏自身の赤裸々な過去やその哲学、アンパンマンはどの様な気持ちを持って描いたかが書かれています。


文体自体は子供向けなので非常に柔らかく分かりやすい表現なのですが、内容はとてもとても深く、大人の私たちでも唸ってしまうようなお話ばかりです。おそらく、この本の本当の意味や価値は対象年齢の小学生では分からないと思います。ある程度人生経験がないとわからない。


例えば、アンパンマンの歌の中に「愛と勇気だけが友達さ」という歌詞があります。


中学生位の子達はこれを「アンパンマンは一人ぼっちなんだ」とか言って笑うのですが、ここにやなせ氏の正義の哲学が詰まっています。


愛と勇気だけが友達さ

「戦うときは自分一人だと思わなくちゃならない。友達を巻き込んではいけない。責任は自分で負うという覚悟が必要なんだということ」


「正義を行う人は強い人間かというとそうではない。我々と同じ弱い人だが、困っている人がいたらつい助けるために飛び込んでしまう。それが愛である。」

「また、何かを決断する時はいつも勇気がいる。正義とは、本人も傷つくという覚悟がなければ行えないもの。そして、傷ついてもやらなければならない。そうしないと世の中はどんどん悪くなってしまう。」


どうです?子供向けとは思えない位深いでしょ?


この本の最後に、やなせ氏が考える正義のまとめとしてアンパンマンの歌詞が載っています。改めて眺めて見ると、想像以上に心に訴える意味になっていて、子供の時に何気なく歌っていた曲にこのような想いが込められていたのかと仰天します。


アンパンマンというアニメの偉大さをじっくり感じられる良著ですので、是非ともご覧ください。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年4月24日
読了日 : 2011年4月24日
本棚登録日 : 2011年4月24日

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