1900年頃に実際に大阪であった事件「河内十人斬り」がモチーフとなった本作。第41回谷崎潤一郎賞受賞。
思弁的な性格ゆえに周りの人間とうまく意思疎通が出来ず、うじうじと自省するもまた繰り返す主人公・熊太郎。そんな間抜けで放蕩な彼が、ある裏切りをきっかけに殺人に手を染める。
不条理、不毛、不器用・・・何がどう悪いのか分からないけどうまくいかない苦悩。それを酒・女・博打で晴らすいわゆる”ダメ人間”な熊太郎。良くも悪くも喜びや怒りを素直に爆発させる辺りに、どうしようもないけれど困った奴と、親近感を感じてしまう。でも熊太郎の周りはそうは思ってくれなかった。熊太郎の徹底した心理描写とその変化に、この作品の本質を見た気がする。1人の青年の溜息のような一言に『告白』の2文字がずっしりと応えた。最後まで熊太郎は不器用だ。
討ち入りからの流れは圧巻。厚みのある作品ですが、駆け抜けるように一気に読み切れます。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2013年10月14日
- 読了日 : 2013年10月14日
- 本棚登録日 : 2013年7月21日
みんなの感想をみる