「私の読書日記」という題で連載されていた書評をまとめた第一部と、1995~2005に雑誌や新聞等へ寄せた書評文をまとめた第二部の二部構成の書評集。
文章に人柄が現れる人、という印象を前から持っていましたが、この本は殊更顕著だと思ったのは前半が日記調で書かれているせいかもしれません。圧倒的な読書量と博学な知識、幅広い好奇心と、何より強い個性。書評ひとつひとつに本への情熱が込められていて、こちらも真剣に読まないと蹴倒される気分に。でもその強さが心地良かったりします。
井上ひさしさんによる解説も秀逸。
「書評は常に著者と読者によって試されている。(中略)すぐれた書評家というものは、いま読み進めている書物と自分の思想や知識をたえず混ぜ合わせ爆発させて、その末にこれまでになかった知恵を産み出す勤勉な創作家なのだ。」
ロシア語通訳者として大変優秀であった著者が、さらなる舞台として選んだ書評の世界。個性を堪えて人と人を介する通訳という仕事をしていたからこそ、自己が遺憾なく発揮できる書評という仕事は、彼女にとって仕事の枠を超えたステイタスだったかもしれません。
お会いしたことはないけれど、思わず肩を借りたくなるような包容力を文章から感じていました。早逝が残念でなりません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学(エッセイ)
- 感想投稿日 : 2015年1月14日
- 読了日 : 2015年1月10日
- 本棚登録日 : 2015年1月14日
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