蟹と彼と私

著者 :
  • 集英社 (2007年8月3日発売)
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感想 : 13
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これも半自伝小説ですかね? 老親への不安は未だ拭えぬまま、交際しているとも言い難い男性が食道癌に。癌の語源は蟹である、というタイトルですが、ところどころに挿入される蟹に例えた比喩の、あらがいようのない癌という病の力に愕然とさせられます。着実に奪われていく彼の生命というか、それに突然切れてしまい自己嫌悪に陥りながら、民間療法に迷走する姿がすごい。病人に付き添うってものすごいことだと痛感させられます。藁にでもすがる勢いで何もかもに頼るが、最期を迎えてしまう。
怒涛のやるせなさの中、河童の皿で作った時計を巻き戻せば時間が戻る、という挿話がされていて、どこからやり直せば、と河童になり見直すが、彼の笑顔を見たところでその白昼夢?から目覚める。
そうして彼の墓の建てられた蟹曲へ自分に似た彼との共通の友人と訪れ、観光がてら寺をまわる。
生前、どっちつかず、ホモ疑惑、結婚したくない主義等さんざん言ってきた男性でも、病気になりまた送るとなると、ものすごいパワーが必要になる。
生きること、生き抜いていくことのパワーを感じさせられます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代小説
感想投稿日 : 2011年8月31日
読了日 : 2011年8月31日
本棚登録日 : 2011年8月31日

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