ゴールデンカムイはロリータみたいな物語だって思う。アニメでは極力要素を排除した筋だけになっているから違うのだけど、原作は、ロリータの解説で述べられていたことととてもよく似ていると思う。長いけど引用する。
『ロリータ』は読者ひとりひとりによって姿を変える小説である。淫らな少女愛を綴ったエロティックな小説を期待して読む人もいるだろう。さまざまな文学的言及や語りの技巧に満ちた、ポストモダン小説の先駆けとして読む人もいるだろう。話の内容はさておき、絢爛たる言語遊戯こそがこの小説のおもしろさだと考える読者もいるだろう。あるいはとんでもない大爆笑のコミック・ノヴェルとして読む人もいるだろう。アメリカを壮大なパノラマとして描いたロード・ノヴェルだと読む人もいるかもしれない。狂人に人生を奪われた不運な少女に涙する読者もいるかもしれない。伏線がいたるところに張りめぐらされた探偵小説として読む人もいるかもしれない。あるいはアメリカの一時代を活写した風俗小説だと読む人もいるかもしれない。しかし、ここであえて言うなら、『ロリータ』の本当の凄いところは、そうしたすべての要素を含んでひとつの小説にまとめあげている点にある。
ゴールデンカムイも金塊争奪戦でありアイヌ文化であり北海道の自然であり新撰組浪漫であり政治的戦争でありロシアのパルチザンであり…男が脱ぐだけの変態漫画ではない。最初ロリータも私は読むまでただの変態小説かと思って敬遠していたが全然読んだら印象が変わった。ゴールデンカムイも同じ。物語の深み、饒舌な行間から何を読み取るのも読者の自由ってかんじがすごく好きです。最初とっちらかった情報量に追いつけないのだけど、そこをどう捉えるか、ようやく納得いった気がしました。
逆にアニメを観たからかな、ここまで要素が排除された媒体を観たからこそ理解できたのかも知れない。やはり急ぎ足のアニメはダイジェストとしか捉えられないが、まあ声優さんは素晴らしいので観ますが、原作とは別物の楽しみ方してるので、改めて原作を読んで、その深みに気づけたような気がします。
- 感想投稿日 : 2018年10月23日
- 読了日 : 2017年9月14日
- 本棚登録日 : 2017年9月14日
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