「マーサの愛しい女主人」新人メイドがうまく働けるように気遣ってくれた一度会ったきりの主人の姪を思い続ける
「ライラックの花」が咲く頃になると何もかも投げ出し懐かしい修道院へ帰らずにはいられなくなる女優のアドリエンヌだが、ある年修道院は門を閉ざす
「トミーに感傷は似合わない」父に代わり銀行を切り盛りする男勝りのトミーは連れてきた大学の友人と幼馴染のハーパーが恋に落ちるのを応援してやる。トミーの立場はクィア的。
「シラサギ」標本作りにシラサギが欲しい青年に10ドル提示されるがシルヴィアは居場所を答えられなかった。
「しなやかな愛」ディナーを終え彼女とホテルの部屋に戻ったら失ったと思った若さを再び見出した
「ネリー・ディーンの歓び」町一番美しい彼女が望まぬ結婚して子供を産んだが彼女は死んだ。親友だった主人公は育て親達と子供の元を訪れる
「至福」ミス・フルトンに恋をしているバーサだが、夫は妙に彼女に興味なさげ、しかしディナーへ呼んだ帰りに夫が告白しているのを目撃する。
夫をパートナーとして慕っているが、フルトンに恋して始めて愛しく思うってのも愛の複雑さ深さを表していて面白いし他の登場人物も魅力的だった。
「エイダ」結婚せずとも家族を愛し好きな女性と完璧に幸せになることができた女性の話
「ミス・オグルヴィの目覚め」男勝りの生き方を好んできたミス・オグルヴィはある時訪れた島で前世に目覚める
壮大。孤独の井戸も読まなくちゃ。
「存在の瞬間ーースレイターのピンは役立たず」と言われた時からこれまでのことを回想し、彼女の言葉の意味を悟る。そのように立ち上らせる色気の空気感がさすがウルフだ
「ミス・ファーとミス・スキーン」わざとくどくどしい繰り返しの文体を重ねて行く。そうして彼女達がいかにきちんきちんと何度も楽しく過ごしてきたか、生活を堕落させず、自立して、男抜きでちゃんと楽しかったことを強調させているのだと思う。
「無化」病的な女性に息子のいる家に連れていかれ、一年すごすが、彼女に息子と同じような閉じ込められそうな発言を聞いて出ることに。話し手のドイツの印象はその体験に終始するようだ
「外から見た女子学寮」何かになる前のある少女のモラトリアム。
「女どうしのふたり連れ」男と付き合ってると喧嘩になり突き放されたネコの方が母が安心するから男と付き合うと言うが、やはり生理的に男を拒絶してしまう。そんな彼女をタチは愛おしげに抱き寄せる完璧な百合小説だった
「あんなふうに」5歳上の姉が彼氏と喧嘩してメソメソしたりしているのを見て、悲しくなるしぶちたくなるし、そんなように男の子を好きにならないと決意する13歳の妹。
ボカァこういう姉妹百合大好きですね。仲良しだった姉が恋でメソメソするなんてみてらんないムカつくって妹最高だと思う。最初の喧嘩が姉の初潮だったのも最高。
「なにもかも素敵」週の半分はイスラム教徒の家で残りはキリスト教徒の家で過ごすジーニが出会った現地人ゾリアーティとの出会い。エキゾチックな魅力。
「空白のページ」婚礼のシーツについた処女の証で花嫁を占う風習がある中で、唯一血の跡がないシーツがある。一体これは何を意味するのか? 物語は空白だからこそエクスキューズが膨らむ。ディーネセン、さすがの面白さ。
- 感想投稿日 : 2019年7月16日
- 読了日 : 2019年6月29日
- 本棚登録日 : 2019年6月29日
みんなの感想をみる