ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで

  • 新泉社 (2011年1月28日発売)
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ナウル共和国は太平洋に浮かぶ小さな島。人口一万人程度で世界有数の小さな国は、島内で産出されるリン鉱石のために他の国とは異なる歴史を持つ。ナウルのリン鉱石は純度が高く化学肥料の原料となるため、土壌の痩せているオーストラリアの農業に欠かせないものだった。諸外国の支配から脱し、共和国の独立に成功したナウルは、以降リン鉱石の輸出がもたらす莫大な資金を湯水のごとく使った。労働することをやめ、海外の不動産を買いあさり、農業をやめて食料品をすべて輸入に頼るという有様。しかし、やがてリン鉱石は枯渇したため資金の流入が止まり、かつての世界一裕福な国は、難民の受け入れやマネーロンダリングで食いつなぐ最貧国へと転落した。絵に描いたような現実は、アリとキリギリスみたいな話だ。その前に気付けよと思ってしまうが、今の日本の政治が閉塞状態でなかなか有効な手が打てないのと同じように、当事者は遠い未来まで見通すことが出来なかったのだろう。
リン鉱石の発掘と輸出再開に国の再起をかけるが、国民の5人に4人が糖尿病を煩うなど目の前の課題も多いとのこと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2011年9月11日
読了日 : 2011年9月10日
本棚登録日 : 2011年9月9日

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