胸いっぱいの愛を

著者 :
  • 徳間書店 (2012年2月9日発売)
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感想 : 9

1960年生まれの広谷鏡子さんが描く、昭和の時代の女子高校生のお話。舞台は香川県丸亀、野球とロックをこよなく愛する“地味な”(*^_^*)彼女の青春物語がとても懐かしく、嬉しい。


初めての広谷鏡子さんです。

主人公・高山桂子は、たぶん、等身大の広谷さんなんでしょうね。
丸亀の進学高に進み、野球が好きだったことから女子マネになり、兄の影響でロックをこよなく愛する少女。(ビートルズから始まり、ツェッペリンやジェフ・ベック、ジミヘンなど。)
私は野球もロックも、当時のかすかな匂いくらいしか知らないけど、読んでいて、うんうん、わかるよ、うん、そうだよね、と彼女の気持ちに同調してしまえたのは、彼女がいわゆる「普通の女の子」として描かれていたからだと思います。

女子マネとは言っても、「タッチ」の南ちゃんのような華やぎ(*^_^*)があるわけでもなく、ロックが好きで時に近隣の大きな町に行ってロック映画を観たり、ジェフ・ベックに似た男の子を好きになったりもするけれど、ロックという言葉の持つ無頼な響きとは無縁の、むしろ引きすぎくらいのおとなしい性格だし。

私は田舎の進学高の話、というのが好きみたいなんだけど、うん、何かがとても好きだと思っても、どこかで踏みとどまる、地に足のついた高校生、が好きなのかもしれない。

四国の言葉が流れるように語られ、とても気持ちがいい。
やはり私の大好きな「青春デンデケデケデケ」も香川のお話で、進学高だったなぁ、なんてね。

勉強嫌いでふらふらと定まらない兄、よそに女がいるらしく家に帰ってこない父、という家庭であっても、桂子の視点はとことん絶望的にはならず、むしろ、可笑しみをもたらしているのは広谷さんのお人柄ゆえ、なんだろうか。

桂子を野球部に誘う男の子、尾崎くんが私は好きでした。
高校から野球を始め、一所懸命に練習するのに試合には出れない、一年生、二年生を過ごし、そして…。

野球部を中心とした桂子の三年間、プラス その後、という展開がとても優しい着地点を用意してくれていて、かつての高校生、今現役の高校生、どちらが読んでも楽しく、同時に胸が切なくなる物語だったと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月17日
読了日 : 2012年3月17日
本棚登録日 : 2012年3月17日

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