嵐が丘 (新潮文庫 フ 5-3)

  • 新潮社 (1988年2月1日発売)
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本棚登録 : 382
感想 : 45
4

『嵐が丘』は、色々な人の訳で読もうとして、なかなか冒頭を突破できず、度々挫折した作品。
『ジェーン・エア』は好きなので、きっと『嵐が丘』も好みに違いないと見込んで、しつこく自分に読める訳を探し続けた結果、田中西二郎訳に辿りつくことに。

とにかく初めはロックウッドの存在が、「まどろっこしくて」仕方ない。本題になかなか入らないし、舞台は暗いし…ロックウッドって、必要?と思わざるを得なかった。ラストには物語の幕切れを見届ける人間として彼を受け入れられたけれど、物語の手法としては他にもやりようはあった気がする。

ロマンスなので、ロマンスらしい泥沼愛憎劇。『ジェーン・エア』とはやはり好一対になっているけれど、モームが『嵐が丘』を選んだというのが、さすがというか、笑える。『嵐が丘』の方が『ジェーン・エア』より救いがないというのが私の印象。痛々しい感じが堪らないといえば堪らない。

翻訳については、上手いとか下手とかよりも、相性な気がする。さすがに時代も時代なので、田中訳は古臭い。古臭いけれど、古臭いからこそかえって原作のニュアンスを表現できてよいのかもしれない。現代風のさらりとした訳では、冒頭がやたら長く感じられたから読み切れなかったのだと思う。
原作には悪い言葉遣いが入り乱れているうえ、英語に比べて日本語は罵詈雑言のバラエティが貧相だから、ところどころ違和感を感じずにはおられなかった。けれど、これを原作で読むことに比べたら、多少読みづらい訳でも日本語訳を読むほうが楽だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年4月12日
読了日 : 2012年4月12日
本棚登録日 : 2012年4月12日

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