学校教育において試験とは、往々にして記憶力のチェックである。
記憶力が悪い→点数が悪い→頭が悪い
とされ、悪者のレッテルを貼られてきた「忘却」を
もっとポジティブに捉え直してみようという本。
例えば本の読み方。
「短編と長編・大作では読後感に大きな違いがあるが、それは忘却力の差に根ざしている。
短編は読み始めの部分の記憶が生々しいうちに終末を迎え、読者の受ける印象は絵画的だ。
一方、長編は後半になると初めの方のことが、
時間のスクリーンを隔ててかすかに響いてきて、その重層的印象は音楽的である。
記憶と忘却の交錯したところで心象のメロディーが生まれ、
作品は強い感銘を与える事ができると思われる」
また、
「古い友人との付き合いが味わい深いのは、
忘却によって余計な事は美化されているからだ。
忘却のかなたにあるものは、おしなべて哀切で美しい」などなど。
ふーん、なるほど。一理ある。
長編を読んだ後の、なんとも形容しがたいしみじみした読後感には、
忘却の作用も働いていたのか。
なかなか面白いアンチテーゼだった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
サ行
- 感想投稿日 : 2014年3月15日
- 読了日 : 2014年3月15日
- 本棚登録日 : 2014年3月10日
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