帯文で興味を持って購入。
27年間兄だと信じていた人物は何者なのかという謎を全盲の弟が追う、という設定。
全編に漂う閉塞感、不安感はさすがの筆力で、読みながら「見えない」感覚をずっと味わっていた。こんなに不安で閉じ込められた感じがするものなのかと。
残留孤児の問題もそうだが、満州からの引き揚げの話はとても重かった。私の父も引き揚げ者なのだ。かつて一度だけ話をしてくれたが、とても苦しそうだった。
ちょうど敗戦記念日の今日この作品を読んだことになにかしらの意味があるようにも思う。
疑念や疑惑が次々に生まれては反転し、いったいどういうことなのかという興味に引っ張られて一気に読んでしまった。たった一行ですべてが変わる、と選評にもあるが確かにそうだった。伏線も見事に回収されていて、途中で浮かぶ違和感がきちんと解決されていて気持ちがいい。ラストはじんわりとあたたかいものが胸を満たす。
大変読み応えのある作品だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
新刊
- 感想投稿日 : 2014年8月15日
- 読了日 : 2014年8月15日
- 本棚登録日 : 2014年8月15日
みんなの感想をみる