去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2016年4月12日発売)
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本棚登録 : 3637
感想 : 313
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最近、やれサイコパスだのやれ性格破綻者だのと猟奇物を読みすぎたせいで己の求めている本来の狂気の美を忘れていた。

自分軸の天然物とはまた違う、誰かを想うが故「別れ」を境に狂う事を選んだ一人の男。これも紛れもない自分軸に変わりないのだが、この切なさと苦しみを纏った「狂気」が美しかった。

人を極限まで変えてしまう力、憎しみや愛という、人を簡単に狂わせるこの感情に非常に興味がある。
そして触れた事がないからなのか、そこに何故か憧れを持ってしまう。

この作品はまるで、ある男の【狂気の愛と憎悪の作品】を盗み見たかの様だ。読了感はすこぶる悪いものなのだが、一人の男が狂人の道を決心し、その結末を見届ける事になる。たとえ歪んでいたとしても、 愛を貫いたその姿に私は鳥肌が止まらなかった。

頭絡まる読みにくさは否めないが、新情報は落ち着いて既存の情報に上書きしていけば気持ち良く型に嵌ってくれる。イニシャルの謎も納得出来た。
そして何より中村文則独特の言い回し、表現の美しさが魅力的だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2020年10月31日
読了日 : 2020年10月30日
本棚登録日 : 2020年10月30日

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