ペットと主人の絆を“人語を理解する老犬”の一人称視点で描く著者随一の異色作。延々続くMr.ボーンズの思索と全十五頁にも亘るウィリーの語りが炸裂する前半戦は(私的に)オースター作品屈指の難関で、読み進めるのに苦戦したが、後半戦は一気に拓けた展開へ突入していく。従来の様なストーリーテリングの技巧は形を潜めている印象だが、犬視点で紡がれる現世の苦難は読者を作品世界へ誘う牽引力を持っている。悲愴的…否、悲壮的なラストシーンは正に氏の真骨頂と言えるのでは。約束の地<ティンブクトゥ>で二人が再び出逢えるのを祈って―。
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- 感想投稿日 : 2022年8月30日
- 読了日 : 2022年8月29日
- 本棚登録日 : 2022年8月29日
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