雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1959年9月29日発売)
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本棚登録 : 862
感想 : 87
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実は再読(しかも三回目くらい)なんだけれど、
諸事情により一度手放し再度入手し久しぶりに読んだので記録。

好きな作家を訊かれた時、
モームは始めの方に名前を出す作家である。
文学的ながらシニカルでキレイ事に収まっていないところが好き。

そういう意味では一作目・二作目の『雨』・『赤毛』は代表で、
人間を描いているな、という感じ。

同じ信仰に人生を捧げている人物が登場し
人間の人間たる所以を描いているのに、
『雨』は遠藤周作の『沈黙』とは真逆。
人間の弱さはただ恐怖への弱さだけではなく、
時に傲慢となって現れる。
その辺りは社会的背景も無関係ではないのかもしれない。
雨が普段隠れている人間の本性をえぐり出す、
という点も面白い(ま、これがメインテーマなんだが)。
実際人間が気象に影響されることは事実で、
賢いフリをしているけど、やっぱり動物なんだな、と思わせられる。

『赤毛』は実にシニカルで、
コミカルでさえある。
現実って切ない。
人生何十年もたってからその事実に気づくのは、
きっとちょっと辛い。

最後の『ホノルル』も、
最後のオチは『赤毛』に似ていて
人間をちょっと斜めから見ている感じ。

人間ってこんなものなのさ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他海外小説
感想投稿日 : 2012年12月15日
読了日 : 2012年12月15日
本棚登録日 : 2012年12月15日

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