雨・赤毛 (新潮文庫―モーム短篇集)

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制作 : William Somerset Maugham  中野 好夫 
  • 新潮社 (1959年9月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102130087

雨・赤毛 (新潮文庫―モーム短篇集)の感想・レビュー・書評

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  • 南洋の島のジメジメした雨の描写と人間の心理描写のシンクロが見事。鬱屈とした不快感が読み手にまで感染したほど。しかしサスペンスタッチのストーリーテリングの出来映えもあり大いに楽しめた。

  • ◆雨・赤毛・ホノルルの3作品所収。訳:中野好夫◆いずれの短編も、執拗なエゴに支配され歪められた息苦しい世界に驚かされる。長い雨に閉じ込められた中で。この世のものとも思えない楽園の中で。狭い船室の中で。そばで見聞きしているのも辛いほどの緊張が張りつめるとき、終わりが唐突に訪れる。一笑に付されるような些細でお粗末な結末。波でさらわれたように、後には何も残らない。自然は何にも支配されない。おかしくも哀しいわれ(人間)がただ在るだけ。◆モーム、好きかも♡◆訳中の「いぎたない」の使い方が誤用ではないかと気になった。

  • 「品」とか「恥」とか、という話だと思った。
    宣教師、デイヴィドソンと
    商売女、ミス・トムソン。
    頭が良く正義感にあふれ、
    神を後ろ盾に世直しに燃える聖職者と
    脛に傷持つ淫らな娼婦。

    社会的地位にモノ言わせ、彼女を
    強制送還しようとするデイヴィドソンと
    家族に合わせる顔を持たず
    必死に異国へ留まらせてと嘆願するトムソン、
    どちらが恥を知る者だろう。

    聖書にのみ真実を求め、神の名の下に
    無学な娼婦を憐れみ説教する宣教師と
    ない知恵を絞ってあの手この手で
    涙ながらに他者に救いを求め続ける商売女、
    どちらが品を失した者だろう。

    雨は、高き者にも低き者にも等しく注ぐ。
    鬱々と。

    衝撃のラスト。
    彼女が娼婦に身をやつした過去は、
    きっと故郷に、家族にある。

  • 「月と六ペンス」で有名なモームによる短編が収められた作品。


    ①雨
    世界短編小説史上最高の傑作とされる。主人公は宣教師、狂信的な布教に燃える。彼は任地を赴く途中、検疫の為に南洋の小島に上陸する。彼はある女性の教化に乗り出すが・・・。


    ミステリとホラーが混在した物語になっているような印象を受けました。ホラーは幽霊とかではなく人間としての底知れぬ悪の怖さ。あの変わり様・・・。


    ②赤毛
    昔恋人を拉致された美しい女性がいた。そしてその女性に恋をした男がいた。彼は彼女にその男のことを忘れて貰うために必死に愛した。しかし彼女は変わらない。しかし時がたって2人は結婚する。そんなある日に船がやってきて・・・。


    赤毛の男と恋をして女性と結婚した男、そしてその女性。この3角関係に近い構造は現代に通じるものがあります。オレはなぜ結婚したのだろうか?変わり果てた女性を見て男は言います。決して悲しい恋の結末だけを描いていない浪漫なムードが漂う恋愛作品。


    ③ホノルル
    かしこい旅行者は空想で旅をする・・・という哲学チックな出だしで始まる。カラマーゾフのアリョーシャの名前も登場する。舞台はホノルル。ここにはいろんな出会いがある、そう東洋と西洋の出会いの場所がホノルルである。私はそこで誰と出会うのか?


    解説によると一種の民間伝承を素材にしているとのこと。しかし民間伝承を深く知らない私は普通のホノルルでの物語に感じました。個人的に日本人の描写がまたw


    お勧めは「赤毛」です。私は「雨」よりも考えさせられる小説でした。最後のどんでん返しがまさに今も続く男と女の恋愛を示しているようで、随分前の作品なのにやっぱり男と女のこの部分は変わらないようですね。


    次は「月と六ペンス」を読んでみたい。

  • 再読。28年前、中学生の頃に読んだらしいが、なんとなく小説を読みたくなって引っ張り出してきた。
    シニカルである。「雨」とともに特に有名な「赤毛」なんか、突き放されいたたまれなくなるような、あまりにも苦いラストだ。
    やや長い「雨」は作者の代表作のひとつに数えられるが、南洋の島のうっとうしい雨期が苛立ちを呼び、最後に炸裂を生む。
    この小説の主人公たちはイギリスから来た一等船客で、「野蛮な」先住民族や「下品な」船員たちを酷く軽蔑しているスノッブである。この時代キリスト教「宣教師」たちは、「野蛮な」未開の土地を支配し、体よく植民地化しようというヨーロッパの「知」の権力主義を代表している。
    宣教師は滞在した小島で、アメリカ人の娼婦を教化しようとする。権力主義的なあくどい手法で彼女を追い詰め、首尾良く信仰心を与えるのに成功するが、最後、いきなり欲情した宣教師の行動によって何もかもご破算になる。
    しかしこの結末の事件は、まったく描写されていない。結果的事実のみをつきつけて衝撃的な幕閉じとするのは、短編小説だからゆるされるのかもしれないが、ドイツやフランス、ロシアのたいていの作家なら、この場面にこそ頁数を費やしただろう。
    モームは最も重要なはずの、この心理の変転の過程を一切はぶくが、どうやら「雨」の描写によって心的抑圧感を表現して良しとしたらしい。ここでのモームの欲求は、宣教師という権力が自らの人間的弱さのために転倒し、破綻してしまうさまを冷笑的に突き出すことにあったのだろう。この冷笑は愛情を欠くために、人物の心理状況を詳細に追うことを自ら禁じたのかもしれない。
    なんとなく、いかにもイギリス-アメリカ的なやり方という気がした。
    文章自体、我々にはどうも読みにくく、それは文と文の連結が情趣を置いといて効率的な情報の並列に傾いているからだろう。アガサ・クリスティあたりは例外だが、どうもイギリス作家の文体は私には読みにくい。乾きすぎているのである。
    小説としては面白いし、技巧も立派なものにちがいない。けれども、このシニシズムには好き嫌いが分かれるのではないだろうか。

  • はああ、最後で落とす感じなのですね。
    しかしシニカルではなく注意喚起に近いような、ヒネてない落ち。

    「赤毛」の描写が特にすんごい美しかったです。「雨」を読んだ地点で落ちが読めるのですが、それを差し引いてもすばらしい。

    10.05.06

  • 雨,赤毛,ホノルルの3編.
    いずれも男女間の愛や欲望の物語で,モームの話らしい第三者的なシニカルな視点から描いている.裏表紙の紹介によれば「雨」は世界短編史上の傑作と言われているらしい.そこまで感心はしなかったが,すべて最後の1ページの物語の反転が見事である.

  • どの作品もすぐには入り込めず、でも気づくと面白くなっていて先が気になり、最後にひぃぃ…っと思わされる。
    すごく共感するけどちょっと冷ややか過ぎるように感じ、けれどまた、男女の愛や情熱に対しては情緒的でもありそこが好ましいと思った。

  • 「月と六ペンス」が有名なモームの短編集。月と六ペンスでも感じる南国情緒をより味わえる短編集かと。ここでの南国は現地人を軽蔑しながらもその場所から離れないでいる異国人たちの目を通して語られていて、登場人物たちの人生の妙に感じ入るところもありながらどこか滑稽です。ダニエル・デフォーと異なり、モームは意識してそう皮肉っている気がします。

    「雨」
    この短編は他の南国風短編とは一線を画します。宗教が持ち得る無神経な傲慢さとか、それと別にある人間の本能(しかもこれもまた嫌らしく汚いものときた!)とかを綺麗にまとめたような話です。などと偉そうに書いたものの、この話の主題を明確に語るのは難しく、また人によって感じ方も様々かと思います。でもだからこそ名作と呼ばれるのではないでしょうか。

    「赤毛」
    異国の甘く苦い恋の幻影、サムセント・モーム風皮肉を添えて といった感じです。

    「ホノルル」
    民族伝承を素材とした話で、前2つの出来には少し劣るものの、ハラハラドキドキ船長と一杯やった後のような読了感です。

  • 雨音が消してしまったのは音だけなのか、否、地面を叩きつける音は人の理性までも奪ってしまった。
    宣教師は悪趣味な売女の身体に溺れ、汚らわしい豚になる。
    …なんか千と千尋みたい。

    続く赤毛は、純粋な恋心と一途に想い続けることの不可能さを描く。
    きっと僕は大丈夫だ、不可能を可能にする、そう思っている今の僕に未来の僕は何て話しかけるだろうか…

    最後はホノルル。日本人の描写に風当たりの強さを感じつつ、いつの時代も女心は秋の空なのだ。

    DNAに組み込まれている人間のルールを素晴らしい描写で語る本作。

    モーム素敵。

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