フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2006年5月30日発売)
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5

もともと数論的なものは好きなのですが。
残念ながら頭がついていかないので専門的な本は読めないし、
かと言って暇つぶしの「頭を使う本」みたいなのは物足りない。
という私には非常にぴったりの本でした。

サイモン・シンの一冊目ということで読んだのだけれど、
やっぱり面白い。
カール・セーガン亡き後、
今一番追いたい(広義の)ライターです。

もちろん「フェルマーの最終定理」という言葉は知っていたし、
これまでの人生で何か耳にした記憶は朧げながらあったのだけど、
そうですか、証明されたんですか。
感慨深いです。

本そのものの事を書くと、
やはり第一作目なためか、
構成がすごく練られている感じがする。
フェルマーの最終定理が生まれた時代、
そもそものフェルマーその人から現代のワイルズまでの
フェルマーの最終定理を巡る歴史と、
ワイルズが幼少の頃から証明を果たすまでの彼の人生を
オーバーラップさせてある点、
またワイルズが定理を証明するシーンの盛り上げ方、
そういった作為的な演出に
なんとなくサイモン・シンの気負いのようなものを感じる。
この気負いや作為は以降の著作では感じられなかったもの
(以降二作はより自然な構成だが、
その分ちょっと冗長になっている部分もあったかもしれない)。
でも決してそれは悪い意味ではなく、
その演出はとても上手に機能しています。
特にラスト近くのワイルズの最初の失敗から一年後の成功までの行(くだり)は
本当にドキドキして、
成功したと知った時には心から喜びが湧き上がったくらい。
一冊を通じてワイルズという人間に感情移入が多少あったのもあるのですが、
やはりね、こういう大きな謎が解かれた時代に生きているという喜び、
これが大きい。
だって証明できなければ、
あれだけ歴史的に盛り上がったフェルマーの最終定理は、
実はガセだったのかもしれないという
つまらない結末の可能性を抱えたまま
人生を終わらなくてはならないのだから。

最後に、サイモン・シンはフェルマーの最終定理なき後の
謎は何かについて言及しています。
なかなか面白い候補も挙がっていたのだけれど、
個人的にはですね、
ワイルズが20世紀の数論を駆使してようやく証明したフェルマーの最終定理を、
フェルマー自身は如何に証明したのか?
という謎に興味があります。
フェルマー勘違い説もある中、
私は、実はこれまで300年間の様々な人が見逃していた、
17世紀の数論知識で可能な証明がある、
という方にかけたい。
だってその方がロマンがあるじゃないですか。
世の数論学者の皆さん、
頑張ってください。
願わくば、
私が生きている内に。

ところで訳者の青木薫さんって女性なのね。
素晴らしい。
数学系って(本人は理論物理学者さんらしいが)男性が多いので、
同性として嬉しい限りです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション?
感想投稿日 : 2012年11月16日
読了日 : 2012年11月16日
本棚登録日 : 2012年11月16日

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