――
十五年前の殺人。
被害者の妻。
当時四歳だったその娘。
かつての婚約者。
そして、もうひとりの女。
交換殺人。
偶然ながら、ひとつ前のレヴューと好対照なものを読んだ。つまり題材としてはよくあるものを、これほど楽しく読ませてくれる作家は今や貴重かもしれない。
真新しさや斬新なトリックがあるわけではないんだけれど、ストーリーテリングの妙があって。
際立ったキャラクタや衒学的な文章に頼るでもなく、普通の会話が面白くなる。
どこかそう、熟練のしゃべり、の達人がフリートークを面白くするのと似たような。
同じ話も、語り口でこんなに変わるのか! ということがあるように。
ただまぁそれも好みなんだろうなぁ。それこそ思考のつながり、その飛躍。ペース、テンポ。そういうのが、自分に合っているんでしょう。
以下、伊坂さんのあとがきから引用。
“難解な言葉を駆使したり、退屈なストーリーを用意して、「よく分からない」小説にすることは比較的、容易だろう。その反対に、シンプルな筋書きを、決して難しくない文章で描き、迷宮のように仕上げるのは至難の業だ。この作家はそれをやる。エンターテインメントや純文学の区別などどうでもいい。「本物の小説家」とはこういう人のことを言うのだ(と僕は思う)。”
僕もそう思います!←バカっぽい
☆3.4。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2021年8月5日
- 読了日 : 2021年8月4日
- 本棚登録日 : 2021年8月5日
みんなの感想をみる