ソ連崩壊後の不穏な空気の残るウクライナを舞台にしていて、主人公はペンギンを飼っている売れない作家です。この時点で惹かれました。ウクライナの作家の本を読んだのは初めてです。
業界にいるので、死亡記事を事前に用意するというのは身近な事柄でしたが、それが物語の軸になっているのは新鮮でした。いつも何気なく接していることが、物語になりうるというのは日常での想像力をかき立てられます。
ペンギンがとってもキュートです。ちなみに著者は別にペンギンを飼ったことはないそうです。そりゃそうだろうなとは思いましたが、どこか意外にも感じるほど描写はリアルです。ペンギン好きとして推せます。
中盤以降はなんとなく話の進む方向が分かるのですが、最後の場面は予想外でした。ただのストーリー的なゴールではなくて、示唆的な終わり方でした。陰鬱で暗い雰囲気が全体を覆っている本書ですが、私はラストのワンシーンのおかげでかなり前向きに感じました。
暗い事柄をを淡々と捉えているような主人公の描き方は印象的でした。どこか色彩のないのが当たり前というか、周りの色に呑まれながら生きている、そうせざるを得ないという感じでしょうか。リアリティを感じました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年11月15日
- 読了日 : 2020年11月8日
- 本棚登録日 : 2020年11月15日
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