古代からの伝言 わが国家成る (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2007年3月22日発売)
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壬申の乱後,藤原不比等が政権を握り,大宝律令や貨幣経済を日本に定着させていくまでを描いている。
法の整備と貨幣の流通により日本を国として成立させることを理想としてかかげ,その手腕はまさに驚愕させられるほどである。
持等,文武,聖武天皇も不比等を評価し,高位に上げようとするが,不比等は度々固辞する。それは,父である鎌足が終生,政権トップに立つのではなく,天智天皇の言わば秘書役として政権を動かしていたことに由来するのかもしれない。不比等は,理想の国家の建設が自分の権勢欲によって実効されていると思われたくなかったのだろう。言いかえれば,それだけプライドが高いということにもなる。真に能力ある者は,権力の座につかなくても人を動かすことができ,改革を実行することができるということの体現であろう。
そして,首皇子(後の聖武天皇)が平城京ではじめて元日の朝賀の儀に臨席されたとき,太極殿の前には北は陸奥,出羽,南は奄美大島や石垣島からやってきた人が献上の産物をもって列をなしていたという。このあと,これらの人々には女帝である元明天皇から官位を授けられている。まさに,現在の日本の全域に天皇の威徳が及んでいたということであろう。
これにより日本に最初の国家が成ったというわけである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史
感想投稿日 : 2009年6月16日
読了日 : 2009年6月16日
本棚登録日 : 2009年6月16日

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