集団的自衛権の思想史──憲法九条と日米安保 (風のビブリオ)

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  • 風行社 (2016年7月16日発売)
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著者のスタンスは「あとがき」に明快に述べられている。本編を読む前と読んだ後に「あとがき」を読むとよい。法人としての「国家」とその関係から導き出される「国民」あるいは「臣民」、そして「人民」「人権」という概念が、「自衛権」という問題を考える上で重要であることを気づかされる。また戦後日本の安全保障論議で展開された、「個別的自衛権/集団的自衛権/集団安全保障」、「必要最小限度/それ以上」、等の線引き問題等について、わかりやすく整理されている。と、読後に書いたのだが、その後、 水島朝穂氏が篠田氏による本書、『ほんとうの憲法』、ブログの内容を批判している文を、水島氏のウェブサイトで読み、なるほど、と思った。またそれに対する篠田氏の反論は水島氏の指摘にまともにこたえていない。米軍の存在を前提に9条について考えるべき(憲法だけを見て9条を論じるべきでない)という篠田氏のスタンスはもっともだが、学者として批判したことに学者として反論されたのだから、篠田氏はそれにきちんと答えるべきだろう。そうでなければ、氏への信頼は自ずと揺らぐ。いずれにしても、本書を読むのにあわせて、水島氏による批判を読むことをおすすめします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2018年9月6日
読了日 : 2018年9月6日
本棚登録日 : 2018年9月6日

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