(062)嘘 (百年文庫 62)

  • ポプラ社 (2011年1月13日発売)
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感想 : 22
4

「革トランク」
見栄の象徴。
中身には役に立たないクズが詰まっている。
繰り返される(こんなことは実に稀です。)が、もったいなくも、言い訳がましくも、わびしくも感じられる。
「ガドルフの百合」
いかにも宮沢賢治らしい話。
言葉の使い方に戸惑う。
二回読んで、やっと頭の中に絵を描くことができた。
読み込むと、その美しさがわかる。


「嘘」
こんな嘘で涙をするあたりが、随分幼い。
すぐに嘘だとばれるだろうに。
子供の頃は、こういう話に興味があるのだな。
「狐の子供」
昔のカツアゲ。
いつの時代も、強い者が弱い者を脅し、つけこむんだ。
とっとと、大人に告げ口して、助けてもらえばいい。
子供なんだから。

「ある孤独な魂」
真っ直ぐな魂は、盲目であっても真実を射抜く。
自分の頭で考えるということ。
正しく生きるということは、受難の人生だ、ということか。
盲目的に何かに従うということの愚かさが、端的に描かれている。
それでも、周りに流されて生きる人たちの方が、社会的には成功するという理不尽さも。
昔からずっと変わらないのか。
人間は、社会は進歩しないのか。
切なくなる。
「せまい檻」
すごくよくわかる。
言いたいことが、すごくよくわかる。
でも、羊たちには、いらぬおせっかいなんだなぁ。
檻に甘んじる人たちも沢山いる。
檻を幸せだと感じる人たちも、いっぱい。
そして、「檻」というものは、人によって見え方が違う。
結婚制度を「檻」だと思う人もいれば、それをやすらぎだと感じる人もいる。
だから、虎のしたことは、ある意味では偽善なのだろうと思う。
偽善だから、石の神様に罰せられてしまうのだ。
社会とは、理不尽で、窮屈で、本来の姿を欠いたものであるかもしれない。
それでも、そこになじんでいってしまえる人も沢山いる。
「真」が必ずしも「幸せ」でないかもしれない、というもどかしさ、苛立ちを感じた。
「沼のほとり」
蝶を全面的に肯定しているわけではない。
そこには皮肉も含まれているように感じる。
それでも、後に地位を得た人物たちよりは、マシだと感じさせている。
本当の賢さって、難しい。
社会は正しく美しいものではないから。
それでも私たちは、この世界で生きていくしかないのだ。
「魚の悲しみ」
人間の傲慢さが描かれている。
他の命に対して、あまりに無頓着で、自己中心的な考え方をしている人間。
このエロシェンコという人は、本当に偏見のない眼差しを持った人なのだな、と強く感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9・文学
感想投稿日 : 2020年5月14日
読了日 : 2020年5月16日
本棚登録日 : 2020年5月14日

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