新装版 推定無罪 (上) (文春文庫) (文春文庫 ト 1-11)

  • 文藝春秋 (2012年9月4日発売)
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本棚登録 : 299
感想 : 24
5

 古典の名作と言われるだけあって、とっても面白かった。事件が起こるまでに、人物関係を細かく描いており、主人公が被疑者となってからは息詰まる法廷戦、その合間に描かれる心理描写や家庭の様子など絶妙のタイミングで描いており、一気に読めてしまった。

 主人公が被疑者として疑われるのも、良いタイミングでとっても面白かった。また、最後まで新犯人の描写がないのもドキドキできて面白かった。途中で、判事の暗い過去や検事との収賄など疑う要素ばっちりの描写をしているにもかかわらず、それを上回るどんでん返しの犯人描写にはびっくりさせられた。

 さらに、出てくる登場人物一人一人が面白いキャラをつくっており、しかも、読み手によっても変わってくるのが、この人の小説の特徴なんだろうと思った。たとえば、弁護士のスターンにしても、自身の出世を望みつつも主人公を助け、さらに真犯人に気づいていたとしても、主人公のために違う戦略を考えてあげる優しさをもっている人物とも読めた。反対に、その戦略を主人公に悟らせることによって、弱みを握り、自分の出世につなげようとする巧妙なやつとも読めるのが、とっても面白かった。

 また、リップランザー刑事も、最初はただの主人公びいきの刑事として描かれているともったが、最後の推理の鋭さからすべて計算された発言だった、と思えるのが面白かった。

【2019.02.21】再読
1回目に読んだ時も恋愛描写がたくさんあることに驚いた。精神科医への告白で不倫の現場を描く等々驚くことが多かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年12月11日
読了日 : 2012年12月11日
本棚登録日 : 2012年12月11日

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