戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (1994年8月3日発売)
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感想 : 55
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戦時中、戦艦大和の乗組員としてその特攻出撃に参加した著者による、記録文学。

硬派な文体で、虚飾や読者への媚びを一切廃し、ただ淡々と自分の体験した大和出撃を描く。途轍もなく貴重な書である。
ここには戦争に対する反省やら、人間の生き方についての哲学めいたものは登場しない。何を読み取るかは読者次第なのだろう。

乗組員の実体験に基づいている為全体的に臨場感あふれるが、特に轟沈から救出されるまでの下りの迫力は凄まじい。

こういった本を読むと、本当に今の我々の世代というものは戦争から遠ざかり、その教訓を実感として感じることがすっかり不可能となっていることを痛感する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2010年8月22日
読了日 : 2010年8月22日
本棚登録日 : 2010年8月22日

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コメント 2件

だいさんのコメント
2013/08/18

>その教訓を実感として感じることが

戦争の実体験から、学ぶことがあるのだろうか?

ジャミラさんのコメント
2013/08/18

あるでしょう。
知識として知っていることと、経験として知っていることは雲泥の差があるために、実体験からしか得られない考え方があると思います。

私的な例ですが、昨年、陸前高田に震災復興のボランティアに行きました。
現場の状況はニュースから想像していたものより、遥かに厳しいものだと感じました。
この経験の前と後では私自身の防災に関する心構えは明らかに変わりました。

同様に、前線・銃後に関わらず戦争の苦しみを実体験した人と、いまの私の世代(20代)とでは「戦争」と聞いた時に連想するものや、反応の仕方は大いに違うはずです。

時々ネットで、極端に過激な右翼的発言をする人を見かけますが、戦争を実体験してもなお同様の政治思想をもつかと言ったら、きっと違うと思うのです。
いずれ戦争を経験したことにない世代だけになったときに、悪い意味で歴史を繰り返すのではないかという不安感があります。

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