ナチズム: ドイツ保守主義の一系譜 (中公新書 154)

著者 :
  • 中央公論新社 (1968年2月1日発売)
3.44
  • (2)
  • (5)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 102
感想 : 4
4

ナチズムの基本的性格を党結成初期の活動内容と、政権奪取後の活動内容とから、どのようにして形成されていったかを解明していく。
ナチズムやヒトラーは、歴史に起こった突然変異や全くの異常な現象とする立場を切って捨て、あくまでそれまでのドイツ保守主義の中にその芽があり、それに連なる系譜に位置づけられるとする。

ナチスやヒトラーの行状を、ただ例外的に生じた狂気と断じてしまうのは感情的には楽だが、それは一種の思考停止を生む。
客観的に当時の政治状況とナチズムの推移を分析すると、それはあくまで当時のドイツ保守主義層の思想願望に多くの共通点と基盤を持った政治思想であったことが分かる。
そしてそのように分析することで、現在の私たちでさえもナチズムは全く縁遠いものではなく、ともすれば陥りかねない極端な思想傾向であるという警鐘にもつながる。

本書全体は先行研究なども多数引用しながら丁寧な筆致で進んでいくが、それゆえに若干冗長な部分もあるのが欠点か。
やや古い本ではあるが、今でもナチズムの形成過程を学ぶには良書だと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2015年6月1日
読了日 : 2015年5月31日
本棚登録日 : 2015年6月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする