小林信彦が荒木経惟と共に、1983〜1984年当時の東京をめぐった記録です。戦後からの東京の変遷を自らの体験を交えて語っており、いかにも小林信彦らしい一冊といえましょう。
東京に対する屈折した愛憎満載の本文も魅力的なのですが、注目したいのはそこに描かれた東京の姿。例えば、著者は新宿東口周辺を「やくざ映画専門の昭和館(<全館冷房>の表示が出ている)とポルノ専門の小屋が目立つ」「日が落ちると、閑散として、落ちついて食事ができる店もない凋落ぶり」の街としています。これが2013年現在の新宿東口と一致しないのは言うまでもないでしょう。初版出版から30年を経た今、本書の記述自体も既に歴史に組み込まれた感があります。
1992年に加筆された「終章」、2002年に文庫化された際に追加された写真、そして2013年の読書と、一冊で30年を追いかけるのは興味深い体験でした。7年後にオリンピックを控えた今、東京がどのように変わっていくのか考えさせられます。
荒木経惟による都市写真も必見。
お勧めです。
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- 感想投稿日 : 2013年9月18日
- 読了日 : 2013年9月18日
- 本棚登録日 : 2013年9月18日
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