沢木耕太郎の長編小説。社会党委員長・浅沼稲次郎とそれを襲った右翼少年・山口二矢の人生を細やかに描写することで、あの「テロル」のリアリティと人間ドラマを浮き彫りにしていた。
単なるテロの事件と構図に終わらせることなく、その人間模様を事実に基づいて、浮かび上がらせていたのが印象的だった。
人は極端なものに走る存在だと思う。だから、あの「テロル」も狂気に陥った少年・山口二矢の行きすぎた行為として、単純な理解に留まらせてしまうのでは、そこからは多くのことが抜け落ちる。
そして、それは浅沼にも言える。戦前・戦中と時代に翻弄され、堪えて生きて来た浅沼の持つとてつもないエピソードの数々が、社会党の委員長という肩書だけでは語りきれない存在であることを物語っていた。
あの「テロル」は何だったのか・・・。安保後の政治の激動の時代にただただ、敬服していしまう。そして、今の私達の時代は一体どのような時代なのか思いをめぐらさずにはいられない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ニュージャーナリズム
- 感想投稿日 : 2011年1月19日
- 読了日 : 2011年1月19日
- 本棚登録日 : 2011年1月19日
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