わたし自身は知らない作家であったが、読書家の中では大変評判のいい作家だということを知り、是非一度読んでみたいと思ったアリステア・マクラウド。
この作家は寡作のひとらしく、文庫化されているものは見当たらない。主に短編を書くようで、その短編をまとめた二冊をようやく見つけたので一冊購入してみた。
八編からなる短編集。
マクラウドの初期の短編をまとめたものらしい。
年代順にまとめてあり、1968年から1976年の作品までが収められている。
全編通して感じることは、炭坑労働者の父や祖父と息子といった設定のものが多く、大人になる手前の青年が等身大の姿で描かれている。
炭坑という言葉から想像される、暗く厳しく貧しい生活と哀愁や侘しさが丁寧な状況描写によって、読み手の胸に映像のように浮かび上がる。
物語は派手なものではなく、ある一日を切り取ったようなもので、ままならない人生や変わりのない日常、生命の儚さといったものが感慨深く綴られる。
時に露骨な性や遺体の描写があったりするが、不快さは不思議と感じられず、物語に馴染んでいる。
少年が家族で父親の故郷に行き、過ごす姿を描いた「帰郷」、少年と生活が貧しく売らざるを得ない老馬とを描いた「秋に」、「失われた血の塩の物語」の三作が特に印象に残った。
好みは別れるかもしれない地味な作品ばかりだったが、わたしは早速もうひとつの短編集「冬の犬」を購入した。
静かで色褪せたようなマクラウドの世界は、居心地の良ささえ感じた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年9月6日
- 読了日 : 2016年7月29日
- 本棚登録日 : 2016年6月6日
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