ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1225)

著者 :
  • 岩波書店 (2010年1月21日発売)
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2009年1月にオバマ大統領が就任した。この本はその1年後の2010年1月に出版されている。医療制度改革など人々が何をオバマ大統領に期待したのかが描かれる。
本書では、学資ローンにより学生が借金地獄に陥る実態、医療制度改革が製薬会社や保険会社のロビー活動により骨抜きにされていく実態、刑務所が低賃金労働者を供給する民間企業の一部となっている実態などをインタビューを中心に明らかにしている。
ニューヨーク州では、スリーストライク法により、3度目の有罪判決を受けると、犯罪の内容にかかわりなく、終身刑を受けることになっているという。一方、刑務所は運営の民営化が進んでおり、時給40セントで労働させられ、部屋代と医療費で毎日2ドル引かれるなどしており、最終的に刑務所を出るときには借金を抱えることとなり、社会復帰がさらに難しくなる。アメリカ国内の大手通信会社の一つ、エクセル・コミュニケーション社は電話番号案内のオペレーターを刑務所に委託している。塀の外なら最低でも月900ドルの給与と社会保険等の経費が掛かるところ、囚人を雇えば、月180ドルで福利厚生費は一切かからない。こうしたことから、以前は第三国に委託していた業務も最近では刑務所に委託する企業が増えているという。今では刑務所REITが安定的な収益が期待できると人気になっているほどだ。
アメリカ社会は一体どうなってしまったのだろうか。オバマ大統領も結局アメリカ社会を変えることはできなかった。そして、今度はトランプ氏のような過激な発言で民衆を煽る人が大統領候補として人気を博している。アメリカ社会の分断の状況は深刻だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・哲学・社会学・歴史
感想投稿日 : 2016年8月14日
読了日 : 2016年8月14日
本棚登録日 : 2016年8月10日

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