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  • 白水社 (2012年9月26日発売)
4.12
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本棚登録 : 856
感想 : 46
5

読み終えた後一息ついて、はてどんな感想を述べたらいいものかとしみじみ思う。いや、別に感想を述べねばならないということでもないのだけれども。
この本は2段組であとがきと解説を抜いて850頁というかなりの大著であるにも関わらず、比較的するすると読めた。が、そのあらすじを説明するのは容易ではない。

全体で5つのセクションから成っていて、それらが互いにつながり、はたらきかける。それぞれのセクションが独立しているとも言えるけれど、共通して登場する人物・背景があるので読み進めていくと後々色々とつながることが出てくる。
しかし、埋め込まれている情報があまりにも膨大。実在の文学作品についてはもちろん、映画や音楽、料理や健康の話などを登場人物に語らせている。そこではおそらく筆者であるボラーニョの批判的意見も展開されているのだと思う。

5つのセクションではそれぞれ個々の面白さや特殊さがあるのだけれど、とりわけブッ飛んでいるのは第4部「犯罪の部」。5つのなかで最もページ数がさかれているのがこの4部なのだけれど、とにかく女性がレイプされて殺されまくる。1頁毎におそらく2〜3人は死んでいく。しかもその記述は事典の項目のようにひたすら羅列されていくものだから、「あれ?俺は何を読んでるんだ?」という感覚にすらなってしまう。
この犯罪というのは実際にメキシコで現在進行形で起きている事件をもとにしている。「シウダー・フアレス連続殺人」は今も犯人が捕まっておらず、被害者は増え続けている(〈マキラドーラ〉という多国籍企業下の製品組み立て工場の女工がレイプされて殺され、砂漠に捨てられるという連続殺人事件。こちらも参照:http://garth.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/2666-c7b5.html)。

数多のモチーフと、少なくない数の登場人物、実在の作家や同年代の作家についての多くの言及を含んだ物語が架空の作家アルチンボルディを巡ってはじまる。凄惨な殺人をクールに描写したかと思うと、詩的で美しい情景を目前に広げてくれる(ちなみにメキシコの街の雰囲気はイニャリトゥの映画作品を勝手に脳内であてはめていた)。
正直一読して「わかった」と言うことは(少なくとも俺には)とてもできない。この文章を書いている今も「どのようにわからないのか」について考えている。
でも面白い。それは確かなことだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年12月12日
読了日 : 2012年12月12日
本棚登録日 : 2012年12月5日

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