蹴りたい背中

著者 :
  • 河出書房新社 (2003年8月26日発売)
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本棚登録 : 8014
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2010年12冊目。
140頁。

ブックオフで購入。


---あらすじ---
 愛しいよりも、いじめたいよりも、
もっと乱暴な、この気持ち。
 高校に入ったばかりの“にな川”と“ハツ”はクラスの余り者同士。
 臆病ゆえに孤独な二人の関係のゆくえは・・・・・・




 高校時代、現代文の問題集に本書の冒頭部が載っていて、それを読んで以来いつか読んでみようと思いながら、なんとなく読んでいなかった本書。結局、“夢を与える”を先に読んでしまった。
 思春期特有の、素直になれない感じというか、大人と子供を行き来している感じというか、そういう心情が上手く表現されているように感じた。“泥臭く幼い”というのが、ハツにもにな川にも一番よく当てはまる表現なのかもしれない。




p.3
 葉緑体?オオカナダモ?ハッ。っていうこのスタンス。あなたたちは微生物を見てはしゃいでいるみたいですけど(苦笑)、私はちょっと遠慮しておく、だってもう高校生だし。ま、あなたたちを横目で見ながらプリントでも千切ってますよ、気怠く。っていうこのスタンス。

p.4
 高校に入学してからまだ二ヶ月しか経っていないこの六月の時点で、クラスの交友関係を相関図にして書けるのは、きっと私くらいだろう。当の自分は相関図の枠外にいるというのに。

p.60
 この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい。いきなり咲いたまっさらな欲望は、閃光のようで、一瞬目が眩んだ。

p.66
 カーテンの外側の教室は騒がしいけれど、ここ、カーテンの内側では、私のプラスチックの箸が弁当箱に当たる、かちゃかちゃという幼稚な音だけが響く。

p.64
 かくれてねむる。

p.64
 幼い人、上手に幼い人。そして彼女の前にいた泥臭く幼い私。

p.68
 教室での私と彼の間には、なぜか、同じ極の磁石が反発し合っているような距離がある。

p.121
 ぞっとした。好き、という言葉と、今自分がにな川に対して抱いている感情との落差にぞっとした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説
感想投稿日 : 2010年12月14日
読了日 : 2010年12月7日
本棚登録日 : 2010年12月14日

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