明治維新からわずか150年足らずという短い間に、日本は、近代化、いくたびかの戦争、不況と好況をくり返しつつ、ものすごい数のスクラップ&ビルドを経験。2006年には大阪市営下寺住宅(通称“軍艦アパート"・1930年竣工)解体、2007年旧長崎刑務所解体、2012年川南造船所跡解体、三井三池炭鉱有明鉱跡解体と、日本の近代化や経済成長とも関わりの深い建物・施設が次々と姿を消していくことになっています。 経済優先で、あるいは景観や地域の安全性に配慮して古い建物がガンガン取り壊されてしまう一方で、こうした建物が日本の近代化や経済成長に貢献した貴重な現物史料として、あるいは見栄えのするロケ地・写真家やカメラ好きにとってのモチーフとして、その価値を再認識し、保存しようという動きがあります。 本書では、「保存決定」「観光資源として公開」「解体予定」などさまざまな運命にある約40の産業遺産を取り上げ、その魅力的な姿をあるがままに紹介するとともに、「本当に解体が必要なのか」「産業遺産として後世に残す意義はないのか」「地域活性化に使えないか」など問題を投げかけます。 …と書くと、とても堅苦しい本のようですが、そこにあるのは、映画に出てきそうな古びた機械だったり、複雑な姿の不思議な巨大工場、あるいは懐かしさあふれる校舎、見知らぬ文明の古代遺跡のような鉱山跡だったりと見ていてワクワクする光景の連続です。
・・・というわけで紹介文でほとんど語り尽くされているので、簡単に感想だけ。写真が満載で、しかもすべての写真に解説が付いていてわかりやすいと思います。その巨大さに圧倒されるものや、美しい建築様式に目を奪われるものなど多彩で読み応え十分でした。でもやっぱり実物をこの目で見たいなあと改めて思いました。
- 感想投稿日 : 2013年12月5日
- 読了日 : 2013年12月5日
- 本棚登録日 : 2013年11月9日
みんなの感想をみる