私的生活

著者 :
  • 講談社 (2007年7月18日発売)
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感想 : 54
4

以前にご紹介した、「言い寄る」の続編です。
読み終えて、もっと読みたい!!と思う作品でした。

なんだろう。
今のキャリアをつむ女子にはとても共感できる作品じゃないかしら。

乃里子は33歳。
一部作の「言い寄る」では31歳で、デザイナー・画家としてある程度の収入を得ていたし、言い寄られていた男も多かったしそんな生活を楽しんでいた。
でも、唯一好きな男には言い寄られず、親友にとられるという失態を演じ、言い寄られた金持ちの男についついなびいていた。

第二作は結婚した乃里子のストーリー。
金持ちの中谷剛と結婚し、お金には不自由しない暮らし。
剛もやさしいし、なにしろ気が合う。
ただ、剛はデザイナー・画家としての彼女を認めず、そういう金儲けにほど遠いような話には興味もなかった。

そんなもんかと暮らしていた彼女だったが、しだいにひずみを生じる。

第三作では独り者にもどった彼女。苺をつぶしながら独り暮らしってなんていい生活なんだろうって考えてる。
誰の機嫌も 伺うことなく、好きなときに好きなことをできる自由!
ふたたび、言い寄られる男と遊ぶ彼女だったが、どうも結婚前とは違う感じ。男友達は増えていくが、手当たりしだいに寝て味をしめていた結婚前とは違う感じ。
純粋に友人が増える。寝ようと思う相手にはなかなか出会わない。

そんなとき、再び前夫と偶然再会。
あんなに気の強い傲慢な彼が、前妻に気を使い、彼女の前で少し弱音をはく。
どうも調子が狂う。
しかしどうも気が合う。楽しい。そこらの男友達には見当たらない楽しさ。

決して弱音や本音を漏らさない乃里子が、思わぬ友人の事故死に見舞われ、前夫を頼り、彼の前で耐え切れず、涙をみせた。
少しずつ前にはみせなかった姿をみせはじめるふたり。

時がふたりを変えたのかもしれない。

結婚生活で、あほほど金持ちだったので、500万のダイヤとか豪華な装飾品・洋服をありあまるほど買ってもらっていた乃里子。(彼女自身は別にねだっていない!)
別れる際に、これだけお金をつかったのに!的なことをいわれてカチン!ときた彼女は彼に買ってもらったもの(お気に入りもあったけど)、すべて置いてきたのだった。
ところが、スイス製のステキな時計は探しても見つからず、別れて半年後に洋服から出てきたもの。
いまさら返すのもね、と言い訳しながら、大切に使っていた。

それを再会して発見した前夫は、それを気に入って使ってくれていたのか~!と喜ぶ。そう、彼は彼で、喜ぶとおもってせっかく妻に買ったものすべてを放置され、それはそれで男心が傷ついていたのだった。

プライドが邪魔して素顔をさらけだしていなかったあのころのふたり。
すこしだけ大人になったふたりはどうなるんだろ。

文章が気持ちいいほどの大阪弁でほんと気持ちいい!
微妙な感覚とかものの感じ方とか 描写の仕方がほんとうに 上手。

タイトルだって、表紙の感じだって、なんだかちょっと 粋だと思いませんか

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 田辺聖子氏
感想投稿日 : 2010年4月21日
読了日 : 2010年4月21日
本棚登録日 : 2010年4月21日

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