蛍の行方―お鳥見女房 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年10月30日発売)
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感想 : 22
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 諸田玲子のお鳥見女房シリーズ第二作。毎度同じことを書くのは気が引けるけど、カバー絵の作者変えたらどうだろうね。これに惹かれて手に取る人と、これに引いて敬遠する人とでは後者がずっと多いようにぼくは思うんだけど。中身がいいだけに惜しいと思う。
 相変わらず矢島家を切り盛りする珠世の魅力的なこと。そのやさしさ、そして何より明るさ。こういう人がそばにいたら、心癒されるだろうと思う。「不運は重なる。ありがたいのは何事にもかぎりがあることだ。災いはいつか福に転ずる。福は福を呼ぶ。それさえ信じていれば、なにがあっても笑顔で切り抜けられる」。まさにそれを体現している。この言葉、そういえば前に読んでここに引用した「賢者はベンチで思索する」の中の国枝(赤坂)老人の言葉にそっくり。なるほど、ぼくはこういう言葉に弱いんだなきっと(笑)。
 第二話の表題作。愛し合っていながらちょっとした言葉の行き違いで別れることになった美弥と次左衛門。「『噂など信じぬ』となにゆえ書いてくださらなんだのか」という美弥の気持はわからないでもない。だけど、そこまで文の文言に厳密さを要求されたら辛いよな。話し合えばどうってことのないことが、手紙にすると一人歩きして行き違いを生む。ぼくは男だからか、劇的な再会後に蛍を届けた次左衛門の心中を思うとやりきれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2012年12月31日
読了日 : 2011年8月13日
本棚登録日 : 2012年12月31日

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