グレーンス警部の「三」シリーズ3作目。三秒間、三分間も十分おもしろかったが、これはそれを凌駕する。文庫解説に最高傑作とあるのもあながち大仰ではない。今回のテーマは難民問題で、悲惨なアフリカ難民を食い物にする悪辣な難民ビジネスにグレーンスとホフマンが挑む。物語の性質上またまたホフマンが無理な潜入捜査を引き受けざるを得ない破目になるのはやむを得ないし、準備期間もないために底が浅くなるのは仕方がない。なので緊迫感の持続という点では前作に劣るものの、それを補ってあまりあるのがグレーンスを心の底から突き動かす悲憤と、ホフマンの長子ヒューゴーとの心の通い合いだ。それらが本作を単なるタイムリミットサスペンスを越えた感動的なヒューマンドラマに仕立て上げている。最後に明かされる黒幕の正体の意外性は弱いものの、その先のひとひねりある真相にはうならされる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2024年4月28日
- 読了日 : 2024年4月23日
- 本棚登録日 : 2024年4月28日
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