完全犯罪 加田伶太郎全集 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社 (2018年4月12日発売)
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感想 : 20
5

推理小説家の加田伶太郎の全集…という体のこの本は、推理小説好きの福永武彦が「加田怜太郎」の名前で発表した8編の推理小説です。
この短編集の名前になっている「完全犯罪」は、最初の作品名。第一作目がこの題名とは大きく出たな(笑)。

短編集の前書きと後書きには、福永武彦さんの推理小説への考え、加田怜太郎名義での推理小説の限界点について書いています。
加田怜太郎という名前は、どうせやるなら巫山戯た名前にしないと!ということで、「誰なんだろうか(darenandarouka)」を入れ替えた名前ということです。
名探偵役は、フランス古典文学助教授の伊丹英典(いたみえいてん)氏。これは「名探偵meitantei」の入れ替えということ。助手役は研究室の助手の久木進で、父親が警察関係者なので、伊丹氏たちが事件現場に入れるという便利な役割です。
伊丹氏は「自分のは机上の空論だよ」というタイプで、犯罪の状況や関係者の心理を考えての推理を進めます。

他のジャンルの作家が推理小説を書く例は他にもありますが、こちらの短編集は推理小説としてはそこまで優れていませんが(ごめんなさい(^_^;)。それでも★5つなのは福永武彦さんが好きだからという贔屓目(^.^))、人間心理を考えたストーリーとなっていて、作者が楽しみながら考えているという感じがします。


 密室の死体。実はそれは被害者自身が企てた計画の裏をかかれたとわかる。/「完全犯罪」

 二階で死んでいるはずの男が、玄関から入ってきた。/「幽霊事件」

 旧家の温室で見つかった死体。旧家の矜持。/「温室事件」

 旅行したまま行方不明になった学生。彼は監禁され睡眠薬を盛られていた。/「失踪事件」

 夜中にかかってくる電話。中学生たちの無垢で純粋で冷酷さ。/「電話事件」

 夢遊病を患うという一家。かつて妻が死んだという家で、今度は夫が死ぬ。/「眠りの誘惑」

 争う声と血痕は残っているが死体がないという事件?/「湖畔事件」

 自殺した女優は、姉の亡霊に悩まされていた。
===この事件は被害者の女優さんがお気の毒な…。さぞかし怖かっただろう。
/「赤い靴」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ●日本文学
感想投稿日 : 2020年2月25日
読了日 : 2020年2月25日
本棚登録日 : 2020年2月25日

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