ぼくの叔父、テッラルバのメダルド子爵は、特に善くも悪くもなく、悪意と善意の入り混じった普通の人だった。
キリスト教徒とトルコ人との戦争に向かった叔父さんは、大砲の前に飛び出て身体を真っ二つに砕かれる。
叔父さんの右側は味方の医師たちにより生き返り、ぼくたちのいる領土に戻ってきたんだ。
帰ってきた叔父さんは、花や動物を真っ二つにし、家々に火をつけて周り、小さな罪で領民を死刑にし、村娘のパメーラとの結婚とその後殺すことを望んで、それらの悪行を諌めようとした乳母のセバスティアーナを癪病患者たちの集落へと追いやった。ぼくだって何度も殺されかけた。
叔父さんは言ったよ。「完全なものは半分になるのだよ。半分になることによって無知で鈍い完全さから抜け出せる。私もかつて完全だったころ、すべてが自然で愚かしく混乱していた。だが私は世界の半分を失い、そして何千倍もの意味を持つ残る半分を得たのだ。美も知恵も正義も断片でしか存在しない」
だから村人は言った。あれはメラルド子爵の悪い半分だ。善い半分は戦場においてきてしまったんだ。
それでは叔父さんの左側は?
それも戻ってきた。
叔父さんの左側は善意ばっかりでできていた。
でもそれは非現実的で非人間的だったんだ。
「私は自分がまっぷたつになったことにより、この世のすべての生き物が不完全であることの辛さに気付いたのだよ。以前私はいたるところにばらまかれた傷や苦しみに気が付かなかった。
だがまっぷたつになった今、かつては知らなかった連帯感を持てるようになった。この世のすべての半端な存在と、すべての欠如した存在感に対する連帯感だ」
ぼくたち領民は、叔父さんの善い半分にも悪い半分にもウンザリしていた。
ある時両方の叔父さんがそれぞれパメーラと結婚することになったんだ。
結婚式の場でパメーラを取り合う叔父さんたちは、決闘で勝負を付けることになったんだ…。
===
子供の目線と言うことで軽く書かれているけれど、領民たちや異教徒たちの生活は相当過酷だ。
第二次世界大戦をはさんで、母国イタリアが受けた傷、沈黙する文学界の圧迫感から書かれた小説。
- 感想投稿日 : 2017年11月17日
- 読了日 : 2017年11月17日
- 本棚登録日 : 2017年11月17日
みんなの感想をみる