雨の夜どろぼんはある家に入ろうとしていた。張り込み中の刑事のぼくがどろぼんに出逢ったのはその時。どろぼんはぼくに言ったんだ。「よぞらを見てください」こんな雨の夜に?
警察の取り調べ室でぼくはどろぼんの話を聞いたんだ。彼の半生、彼の不思議な力。
どろぼんは物の声が聞こえるという。その場にいたくない”物”、持ち主に忘れ去られた”物”、そして持ち主を縛り付けている”物”。それらの物を盗み出す。でも持ち主は誰も気が付かない。だって忘れ去られたんだ、むしろ解放される人だっている。
どろぼうも、人の家に忍び込むのも、どろぼんには息をするみたいに当たり前のこと。だって声たちはいつも向こうからやってきたし、鍵は自然に開いたんだ。
でも最近その力が弱まってきたらしい。
それは生き物の声を聞いたから。
生きた者の声を聞くと、物の声は遠ざかって行くという。
どろぼんは、今は本当に自分に必要な存在を見つけたんだ、自分の意志で声を聞こうとしたんだ…。
***
静かな雰囲気の語り口がなんとも胸が締め付けられるような。
とにかく整理整頓片付けが大の苦手な私には、私の元を去りたがっている物も多かろうと、そういう意味でも胸が締め付けられたりorz
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小学校教科書紹介本
- 感想投稿日 : 2018年5月20日
- 読了日 : 2018年5月20日
- 本棚登録日 : 2018年5月20日
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