都会のアリス [DVD]

監督 : ヴィム・ヴェンダース 
出演 : リュディガー・フォグラー  イエラ・ロットレンダー  リサ・クロイツァー 
  • バップ
3.80
  • (25)
  • (52)
  • (40)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 242
感想 : 33
4

ヴィム・ヴェンダース監督を見よう。(あんまり厳しくないものを…)

白黒ロードムービー

ドイツ人作家フィリップは執筆のためにアメリカを放浪するが、溜まるのは写真ばかりで原稿は書けない。見たものを映しておくと言っているけれど、自分を見失って書けない時期に陥っている。
仕方なくドイツに帰ろうとする空港でリザとアリスの親子に出会った。
リザはフィリップに「アリスをアムステルダムに連れて行って欲しい」というメモを託して姿を消す。

アリスは9歳でキュートでしっかり者。リザはどうやら彼氏と別れてドイツに帰ろうとするのだけれどもかなり揉めているようで倦怠感を漂わせている。フィリップは良く言えば若々しく、しかしいつまでも「自分を見失って、自分の人生に証明が欲しい」という態度が職場の人やガールフレンドから「いい加減にしろ」と思われている感じ 笑

アムステルダムに着いたフィリップとアリスだが、約束の日になってもリザは現れない。アリスを置いていけなくなったフィリップは、言葉の分からないアムステルダムでアリスの記憶と通訳を頼りにアリスの祖母の家を探すことになる。

ロードムービーなので、流れていく街の風景や二人の会話を楽しむ。アリスは置き去りにされたはずなのに悲壮感はないし、お金もなく人生の迷子中のフィリップも案外淡々と振り回されている。さすがに途中でフィリップがしびれを切らしたり警察にアリスを預ける時もあるが、完全に離れることはなく仲良く悪態を付き合いながら旅を続けることに。
こんな数日を過ごしてせっかくたどり着いた祖母は家を引っ越ししていた。ここまできたらフィリップも腹が座ったのか「自分の実家に連れて行くよ」。フィリップにとっても久しぶりの里帰り。しかしその道中で祖母と、母リザの居場所が分かる。
映画ではフィリップとアリスの別れの場面は描かない。フィリップがニューヨークで写真を撮っていたのは「特別な体験だと、自分が特別だという証明が欲しい」からだった。アムステルダムに着いてからは写真を撮ることは少なくなった。家に帰って「落書き」を仕上げるという。

ラストでジョン・フォード監督の訃報記事が出たので舞台は1973年らしい。このころは見ず知らずの成人男性と少女が一緒に旅をしてもそんなにうるさくなかったようだし、あったばかりの男女が同じ部屋に泊まってもなんということもない。(ある場合もあるが)
冒頭のニューヨークの都会から、飛行機でオランダ、列車、車と乗り継ぎ終盤のオランダの田舎町、そしてラストのドイツへ向かう船から長距離列車。移動手段は代わり風景は代わり気持ちも代わり故郷に帰っていく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸
感想投稿日 : 2023年11月3日
読了日 : 2023年11月3日
本棚登録日 : 2023年11月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする