きみの脳はなぜ「愚かな選択」をしてしまうのか 意思決定の進化論 (KS一般書)

  • 講談社 (2015年1月23日発売)
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 われわれの脳がはじめからバイアスをそなえて生まれてくるのは、そのバイアスが歴史的に見て適応度を高めるようにつながってきたからだと考えるほうが納得がいく。自然選択はかなり効率のいい仕組みなのだから、ある行動が人類にもほかの種にも広く見られるなら、それをたんなるばかな行動と考えるより、適応性のある行動だとみなすほうが、推測の出発点としてはよさそうだ。(pp.31-2)

 飛行機事故や納税者のパラドックスの例が示すように、われわれの脳は数が大きくなると感覚が少し鈍くなる。一光年はどのくらいだっけ?10の12乗ナノメートルは?非常に大きいかずは、脳にとって、進化との関連性がまったくないあいまいな概念だ。人の誤った決定や不合理な決定を理解したいなら、この点はきわめて重要だ。(p.164)

 “ダイヤモンドは永遠の輝き“キャンペーンがはじまってわずか30年のうちに、ダイヤモンドの指輪はたんなる贅沢品ではなく、現代の婚約儀礼の必需品とみなされるようになった。(中略)デビアス社は利潤への欲求の矛先を米国だけに限定しなかった。当時、恋愛結婚の伝統がなかった日本のような国では、花嫁のためのダイヤモンドは売り込むのがむずかしかった。しかし、デビアス社は日本人の配偶者獲得の下位自己さえまるめ込み、輝く炭素のために大金を使わせた。1967年にダイヤモンドを身につけていた日本の花嫁はわずか5パーセントにすぎなかったが、1990年には77パーセントにまで増えた。(p.278)

 科学とはミステリーを解くことだ。われわれ人間の選択の根底に何があるのかという問いは、古今を通じて最大級のミステリーのひとつだ。すばらしく入り組んだ筋立てになっていて、調査をつづけている科学者は、手がかりの迷宮をたどっている。手がかりをもたらしてきたのは、進化生物学、認知心理学、人類学、経済学だ。科学をこれほど興味深くしているもの、そして科学の探偵をうそのように興奮させつづけているものは、ひとつ難題を解決すると、新しいもっと興味をそそるミステリーが明らかになるという事実だ。(p.303)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年11月26日
読了日 : 2015年11月24日
本棚登録日 : 2015年11月24日

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