自転車にまつわるエッセイ集。
誰だって自転車には乗ろうとする、乗ってみようとする、でいろいろ思うわけである。
1.はじめる
2.ふりかえる
3.考える
4.旅する
5.いつでも、どこまでも
その時々で感じたことをエッセイにしている。
はじめる。では夏目漱石や萩原朔太郎も自転車に挑戦するのである。
文体に時代を感じる、、だが頑張ってる様子は伝わってくる。
この中では、小川未明の「父親と自転車」がよかった。買ってほしいと頼む吉坊に父親は、「そんなものに、乗らなくたって、いくらでも遊べるではないか、ほかの子供をけがさしてみい、たいへんだぞ。もうすこし大きくなってから、買ってやる。」というが、自転車に乗ってる友だち2人の後ろを真っ赤な顔をして追っかけてる吉坊を見て、いじらしく思い「ああ、おれが悪かった。」と心のなかで泣く。
なんとも言えない…親心に沁みる。
ふりかえる。でも織田作之助や北杜夫、江戸川乱歩など珍しい面々が登場。
金子みすゞの電報くばりの詩も味わいがある。
考える。では映画のなかの自転車というと、「E.T.」がやはりポピュラーだろう。
「自転車泥棒」も失業者のあふれる、終戦直後のローマの少し暗い話。
旅する。では「まくりのアサちゃん」の漫画が楽しめた。絵にも味わいがあるが、昭和24年9月大宮競輪後節でデビューした西村朝子物語。
いつでも、どこまでも。では益田ミリさんの「優しい言葉」自転車で転んだであろう男の子が虫カゴからこぼれた砂を一生懸命にかき集めている姿に声をかけながら涙が出そうになったこと。
自転車…最初にこまを外して乗れたときは、やった〜と思った。風が気持ちいいと感じた。
どこまでも行けるって、少しお姉さんになった気がした。
そんな遠い昔のことを思い出した。
- 感想投稿日 : 2023年7月1日
- 読了日 : 2023年7月1日
- 本棚登録日 : 2023年7月1日
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