日出処の天子 第4巻 (白泉社文庫)

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  • 白泉社 (1994年3月1日発売)
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感想 : 15
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見どころ満載の第四巻。

自己が自己らしくあるためには、いやわたしが人間らしくあるためには毛人に補われねばならぬというのか!わたしの理性や感情をもはるかに越えてもっと奥深い根源的なところで必要としている鍵は毛人だというのか!?人ひとりが完全であるために他の人間をこれほど欲さなければならないというのはどういうことだ。わたしという人間はそれほどまで欠落した部分を持って生まれたのか。いや、それよりもなによりもっと恐ろしいのは毛人にとってわたしは…そうだ、毛人にとってわたしは必要欠くべからざる人間ではない!

と悟る厩戸王子。このくだりは衝撃的だ。厩戸の深い嘆きと悲しみには鬼気迫るものがある。厩戸にとっては、自己の存在が揺るがされるような事実だったことだろう。

また、都は日照り続きで雨が降らず、民の間では疫病が蔓延していた。雨乞いを理由に泊瀬部大王はひそやかに暮らしている布都姫を担ぎ出す。
民衆の視線と厩戸の力で気が散じ、祝詞に集中できないまま儀式は三日三晩続くが雨は降らず、自分は何の力もない女だったのだと悲しみに暮れる布都姫。
布都姫が斎宮辞任に追いやられ大王の妃にさせられてしまうのをなんとか防ごうとする毛人。
そのことで自ら墓穴を掘る毛人を助けるため「わたくしならば仏に祈って雨を降らせてみせまする」と言ってしまう厩戸王子。
売り言葉に買い言葉で雨乞いをすることになってしまった厩戸だが、この雨乞いのシーンが凄い。毛人は無意識だったが、二人が力を合わせれば、自然の大気までをも動かしてしまうのだ。
布都姫の処遇は厩戸に委ねられたも同然だ。毛人が布都姫をもらい受けるために厩戸に力を貸したのだと知ったときの厩戸の悲しみは計り知れない。涙を流しながら「布都姫はそなたにはやらぬ」と決意する厩戸が切ない。

大王に嫁ぐのを厭い自殺未遂までしてしまった刀自古の身に起こった暗い過去も明らかに。
あんなに明るく元気だった刀自古が、暗い陰を背負いながら生きている姿は悲しすぎる。辛すぎる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ★漫画
感想投稿日 : 2011年10月18日
読了日 : 2011年10月12日
本棚登録日 : 2011年10月9日

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