今はもうない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年3月15日発売)
3.65
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本棚登録 : 7498
感想 : 573
5

 S&Mシリーズもついに8巻目に突入!このままVシリーズにまで引き込まれるのか、この軌道を外れて他の世界に移れるのか、この作品にかかっている?

 プロローグや幕間として挿入される部分を除いては、笹木の軽妙な語り口で叙述され、今までの作品とは全く異なる構成だった。読者は、いつもよりもっと大胆な西之園嬢の行動に翻弄され、決して短くない物語を最後まで読み終えた時、全く別の角度からもう一度味わう特権が与えられる。

 最後に登場する5歳の萌絵が放つ台詞も気が利いているが、やはり真骨頂は、当時40歳の森先生が笹木の視点を借りて描く若さに対する羨望であり、西之園嬢との出会いで変化する心情である。もちろん犀川の言葉で語る、人生のスイッチバックについても聞き逃せない。

『今はもうない』については、書きたいことがいっぱいあり過ぎて、まとまらないので、書評は、この物語を既に読んだ方と一緒に余韻を楽しむつもりで書いた。

 S&Mシリーズは、森先生ご自身が作家として羽化していくプロセスを楽しむための成長譚であり、『今はもういない』は、40歳になってある意味、人生の先を視てしまった森先生が、スイッチバックすることへの心情を笹木さんや犀川先生に託して語ったエッセイなのだと思う。

 2016年03月17日
今はもうない >> S&Mシリーズもついに8巻目に突入!このままVシリーズにまで引き込まれるのか、この軌道を外れて他の世界に移れるのか、この作品にかかっている?

思わせぶりな登場人物。不可解な手法を平然と使う森先生。その真意を知りたくて、フィクションにも関わらず、読者は分厚い次作に手を伸ばしてしまうのではないでしょうか?結末が『万能鑑定士の事件簿』のような物足らないものではないことだけを願います。

第一幕は、笹本という男の一人称で語られるのだが、ちょっと現実離れした感じで物語が進むにも関わらず、まるでゴーストライターに書かせたんじゃないの?と思ってしまうほど読みやすく、引き込まれてページが進んでしまった。流石に8巻目にもなると森先生も筆が立つようになったのか?

クローズドサークル×密室殺人という形は初めてか? What、Who、Howをどうやってこじつけていくのか? 後半が楽しみ♪

 2016/3/20
昨晩〔実は今朝(深夜)〕『今はもういない』を読み終えた。この物語りでは、当時40歳の森先生が、自分自身が人生のスイッチバックにいるという心情を笹木と犀川に託し、無邪気で奔放な若かった頃の睦子と萌絵の若さと対比して語っている。森先生と同い年の私は、自分が58歳の今、ようやく当時の森先生と同じような気持ちに到達したことに気が付いて戸惑っている。

今まで読んだ中で最も読みやすい物語。ミスリードを誘うための伏線すら、何度も復習していただく機会があり、返す必要が少なかった。しかし笹木が西之園嬢が慕っているという教授を思い浮かべるシーン、諏訪野が「モエお嬢様が?」とつぶやくシーン、西之園嬢が、両親のことを話すシーンは、読み飛ばしてしまいがちで、どんなニュアンスで話されたかをしっかり把握しておく必要があった~

ずっと『今はもういない』だと思い込んでいたが、『今はもうない』だった…orz

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学・小説(エッセー・対談)
感想投稿日 : 2016年3月20日
読了日 : 2016年3月20日
本棚登録日 : 2016年3月20日

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