知性とは何か(祥伝社新書) (祥伝社新書 420)

著者 :
  • 祥伝社 (2015年6月1日発売)
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感想 : 36
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図書館でなんとなく手に取って閉館時間ギリギリまでかかって一気読みした。佐藤氏の著作を読むのは初めて。
キリスト教神学を大学/院で専攻したクリスチャンであり、外務省の元官僚という経歴が露骨に出ている著作だった。そういう人が、意識の高いビジネスマン向けに書いた広範的・雑多な教養啓蒙書といった印象。じぶんは意識が高くもビジネスマンでもないのでまぁ……といった感じ。国際政治のトピックについては勉強になった。経済学と法学の話題はサッパリだった。
基本的にリベラル左派ではあるが外交官という身から「愛国者」を自負しており、そこの歪みというか姿勢は逆に人間味・リアリティを感じられた。
柄谷行人をひたすらに信奉するのはこの世代の人だな〜という理解で片付けてしまって良いものか。
沖縄論に関して、2014年の県知事選でオール沖縄の翁長知事が当選したことを肯定的・希望的に評価しているが、こないだ読んだ目取真俊の対談集『沖縄と国家』で語られていた目取真による翁長評を思い出すとより多角的な印象が持たれる。
当時のウクライナ”危機”、プーチン大統領の思想やイスラム国(IS)のテロリズム、そして安倍晋三政権についてなど、2022年末のいま読むと、ここ数年で本当に世界が激動しているなあと痛感させられた。
外国語習得のコツは「時間とお金の投資」そして「語彙と文法」!という当たり前のことしか言ってくれない。その後の日本の教育政策批判も誰でも言えそうなこと。まあ文科省の人じゃないからしゃーないか。
「反知性主義」を批判対象として設定するのはいいんだけど、それに陥らないために大事だとして掲げる「客観性」と「実証性」の内実が曖昧なまま、さまざまな分野の、筆者が読んだ文献の引用の羅列で最後まで進むので乗り切れないまま終わった。
「目に見えないが確かに存在するもの(愛とか希望とか信頼とか)」にちゃんと向き合っていこう!という論調だが、それってふつうに陰謀論や反知性主義に相性がいいのでは?と思うことしきり。(そもそも”存在論”ってそんな単純なものなの?と訝しんだ。)
このへんは筆者の愛国主義や信仰心が関わっているんだろうな、というのはわかる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2022年11月26日
読了日 : 2022年11月26日
本棚登録日 : 2022年11月26日

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